tokyouyojigen.jpgイーストプレス★★★

先日亡くなった小田島隆小説を書いていた。去年の6月刊のようです。

こうした小説には珍しく序文と後書きがついています。けっこう恥ずかしそうではあるものの、けっこう楽しかったらしい。自分に課していた「『本当のことを書く』という縛り」を解除している、とも書いています。

内容はショートストーリーとでもいうんでしょうか。東京23区をタイトルとした短い短編(変な言葉だけど)が連鎖しているような、いないようなあいまいな形で続く。

たとえば最初の「新宿区」で登場した少し可愛げのありそうなチンピラは、次の「江戸川区」で、同棲している女を正拳突きする。どこかの区では、たぶん野垂れ死にする。女もどこかの区で何かをする(何だったかは忘れた)。

関連しあってどんどん続くのかな・・と思っていると、いきなり切れます。違うストーリーになる。また、違う話になる。

基本的に小田島感覚の少年たち、男たちの話ですね。やる気が欠如していたり、どこか欠けていたり。人が嫌いだったり。登場の女はたいてい少し強気で独善で、こういう女性の話は今まで読んだことなかったかな。でもどこかで小田島が抱いていた女性像なんでしょうね、きっと。

乾いているけど叙情の世界です。後味が残る。ちょっと気のきいた掌編集。そうそう、東京に育った人間の郷土意識は半径五キロに限られるんだそうです。北区に生まれたなら板橋、豊島、文京の一部まで。いかにも小田島らしい分析です。事実、多摩地区の人間は隅田川の東のことはまったく知らない。葛飾区や江戸川区の住民は、三鷹や吉祥寺を山梨の近隣と思っている。

そうそう、23区だけでは足りなくなって、あとは適当に追加の数編が続きます。念のため。

 

悪口書いてたけど、たまたま見たら(ペンディングトレイン。第7回)、主演俳優(山田裕貴)が石に腰かけてヒゲ剃ってた

おまけに何日漂流していもキレイで清潔だった他の俳優たち、みんな急に薄汚れて、顔とかシャツとか汚くなっている。あまりの急変ぶりに笑ってしまった。演出方針が変更になったんでしょうね。

別件。NHKのEテレで「漂流兄妹」という番組。脳筋の漁師(兄)と生きもの大好き理系女子大生(妹)が、なぜか無人島へ漂流。筋力と頭脳で生き残る・・というものらしい。ちょっと興味がわいて録画してみました。

なるほど。だいた想像どおり。たまたまその回は「紙容器で湯をわかす」「天眼鏡とラムネの瓶で望遠鏡」でした。もう一本あったかな。中身は悪くないんだけど、なんせNHKなので、いろいろ兄妹のお芝居がはいって、笑わせ仕立てに作ってある。惜しいなあ。テンポよくしてもらえると(とくに小中学生にとって)いい番組と思うんだけど。

で、ついでにもう1本。定番の「ピタゴラスイッチ」です。30分まとめたものがあって「ビーだま・ビーすけ」だったかな、録画。ビー玉が転がって、意外な行動をする。敵と戦ったり、味方を助けたり。こっちは文句なしに素晴らしいです。概要を見たら「4~6歳児」が対象となってるんだけど、いやいや、小学生はもちろん、中高生にとっても面白い。大人だって面白い。爺さんだって面白い。

beedamabeesuke.jpgちなみにピタゴラスイッチの目玉は「ピタゴラ装置」です。簡単なありふれた道具を使って、次から次へと動きが連鎖される。「ビーだま」ものの場合はシンプルな斜路をビー玉が転がる。転がって何かに当たったり、ブレーキを外したり、弾んだり、跳び上がったり。その動きが予想外です。

あんまり面白いから録画をそのまま保存しておこうかと思ったくらい。でも思い直して、やはり消しました。オトナです。

(一昨年からかな10分番組に短縮されたようです。あらら。気がつくとたまに見ますが、たった10分でも中身が濃いです。ただ、いい番組に限って存続が危うい。ずーっと継続させてくださいね)

 

ronsosekigahara.jpg新潮社★★★

やたらある関ケ原本ですが、わりあい専門書ふうの内容です。そんなに読みやすくもない。ザッとですが原文資料も掲載している。

では従来の関ケ原解釈とどこが違っているのか。以下、読み終えてからの記憶なのでかなり不確かですが

小山会議で「石田三成と戦う」ことに賛同してくれた豊臣恩顧の大名たち。しかし秀頼さまに逆らう気は毛頭なかった。この時点ではあくまで三成と家康の戦いと認識。

やがて大坂の奉行たちが秀頼の名で家康打倒を発令。つまり大名たちが清洲城に集結の時点では、小山会議の時とは状況がまったく違ってしまった。

ゆえに家康は清洲城の豊臣恩顧の連中を信用できない。危なくて江戸から発進なんてできない。江戸城にいれば比較的安心と考える。

しかし清洲連中への牽制使者が効きすぎて、福島たちが激昂。予想外の強さを発揮して岐阜城をあっさり攻略(城主は元の三法師=織田秀信)。「家康なんて不要」の雰囲気になってしまった。これは最悪。

仕方なく、予定外ながら家康は西へ進軍。それもコソコソと出立した。(察知されると対応して、大坂城から秀頼帯同で毛利が出てくる可能性あり)。もし秀頼が出てきたら清洲城の連中は一挙に裏切りの可能性。

東海道の家康、中山道の秀忠。どちらも軍勢は三万程度だが、中身はまったく違う。万石以上の「独立して戦える戦闘集団」はほとんどが中山道にまわされており、こちらが主力。家康麾下は雑魚集団だった。(本多忠勝などの名もあるが、立場は軍監であり、手勢はほとんどいなかった)

秀忠軍の当初の目的は上田(真田昌幸)の制圧。それが終ってからゆっくり西上の予定だった。急ぐ理由はない。

しかし家康が予定外に西へ進軍したため、当初の予定を変更。しかしもうまにあわない。

以上を総合すると、家康は非常に危なかった。濃霧もあり小早川がなかなか動かない。諸説あるが、秀秋へ鉄砲打ち掛け(裏切り催促)もあったとみる。ただし、かなり遠慮がちな催促だったようだ(誤射だった・・などと一応は謝罪の体裁をとっている)。

したがって関ケ原合戦の主役は豊臣恩顧の諸大名たちである。家康の貢献は実はあまりなかった。

そのため戦後処理でも、豊臣恩顧の諸大名たちは西国でたっぷり加増。けっして「西に追いやった」のではなく、日本の中心付近に置いたのである。西に・・は江戸中心の偏った観点。(

また家康の名前で加増したわけでもない。ほとんどは書状のない口頭での伝達。異例。つまり「秀頼さまの命令」というふくみをもっている。まだ家康がおおっぴらに専断できる状況ではなかったのだ。

などなど。面白かったですが、かなり自信をもって断定のめだつ一冊でした。(

 

著者の経歴みたら京大でした。やっぱり。
 

お相撲

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大相撲テレビ観戦。力士ではなく周囲の観客を眺めていることも多いです。とくに土俵際の砂かぶり席()。

terunofuji2.jpg贔屓はいると思うのですが、どっちが勝ってもみんな幸せそうに口を開けて笑っている。応援している力士が負けたからといって悔しそうな表情はなぜか見当たらない。不思議です。それを見ているこっちまで笑顔になりそうで、変なものですね。

 

そういえば背筋しゃっきりの謎の女性、最近は見なくなりました

 

珍しく感想なんか書いてしまった連続テレビドラマ「ペンディングトレイン・・・」。先日、何週目かを見ましたがさすがに・・・・。

なんだったっけ。そうそう、なぜか未来設定の深い森の中、AグループとBグループが戦争です。なぜ殴り込みをかけたのかは不明ですが、若い女の調達が目当てだったのかな()。

で、防戦側グループでは守るべきか攻勢に出るべきか、それとも話し合うべきなのか、真剣に討論したり。和平論の女性たちも結局は石ころ集めたりY字パチンコ作ったり()。

で、ま、予想どおり、棒を持った連中が突入してくる。野蛮な血まみれ光景にたまらなくなった若者が高いところに上り、地団駄ふんで涙を流して「暴力はやめろよー」と絶叫。はい、当初は耳にもかけず殴りあっていた連中ですが、絶叫3~4回目あたりから恥ずかしくなったんですかね、殴り合いをやめた。Aグループ、Bグループの和解。話し合い。ヒトの心は善なんだぁ。

まともな地上局が、大がかりなセットを組んでまともな俳優あつめて、こういう脚本で連続ドラマを作るんですね。高校学園祭ドラマ。

たぶん気のきいた恋愛ドラマなんかは達者な脚本家なんでしょうが、SFとか歴史とか科学的裏付けとか生と死とか、ちょっとシリアスな設定だと手におえなくなる。それこそChat GPTにでも書かせたほうが良かったんじゃないだろうか。

 

みるからに「ワル」という扮装の俳優が3人ほどいて、頭は悪そうで劣情のカタマリ。わかりやすいです。

パチンコの紐はどう調達した? 弾性はどうやって手にいれた? たまたま管ゴムの束でもあったのか。

 

先日植えたベランダのダイアンサス(ナデシコ)、なかなか順調で、次から次へと花が開いています。

dianthus2.jpg買ったときのビニールポリポットの土はけっこう粘土質で、植え替えるときはしっかりほぐしてやる必要がありました。下手すると、この鉢形の土の塊から根が脱出できいないようなこともある()。

しかし新規にいれた土はけっこうサラサラで、このナデシコ、多湿を嫌うらしいので好都合です。その代わり、いつ触ってもサラサラのため表面が乾いたかどうかの判断がつかない。水をやっていいのかどうか迷います。

買ったときは4~5本だった花が10本近くに増えました。ニコニコしていたのですが、花の落ちた後は、茎がしっかり残ります。「花茎」とでも言うんでしょうか。あんまり綺麗ではないし、このまま残しておいていいのかどうか。

ちなみに種類は違いますがクンシランなんかだと、花が落ちたあとの太い茎は根元からザックリ切ります。しっかり太くて、なんなら焼いて試食してみたいようなボリューム()。ナデシコもそうなのかな。残っていてもたぶん何も役にたたない。

念のためにネットで調査。はい正解でした。花茎は切る。ついでに葉や花が繁りすぎたらバッサリと切り戻すのがいい。要するにかなりクリクリと丸坊主にする。

少し楽しみです。

昔、なんかの鉢で失敗の経験あり。土が固いままで、そのまま根が死んでしまった。

たぶん有害じゃないかな。概して、食べられそうなものは食べちゃダメ。

 

神は細部に宿る。あるいは悪魔も。で、髪はどうか。

いや。先日みたTBSの連続ドラマ「ペンディングトレイン・・・」です。

漂流教室みたいな設定で、電車の一両が乗客もろとも、そのまま未来へワープしてしまう。ある意味定番、無人島漂着ドラマですね。ま、役者はそこそこで悪くはないんですが、惜しいかな、細部が惜しい。

前週はちょっと浮き気味の美容師(山田裕貴)が、電車の中で嫌われ者の女(古川琴音)の髪を切ってやる。本音は切りたくもないんですが「やって」と強引に頼まれたら、ま、仕方ないか。

車両の通路に椅子代わりの何かを置いて座って、透明ポリ袋みたいなのをマントにかぶって髪をカットしてもらう。それを見て「私もやって!」とかオバさま方も次々で、臨時カットサロンは大繁盛。

うん、周囲に他の乗客が誰もいないのはともかく、、問題は切った髪をどうしたかです。通路に落としっぱなしにした? カットした髪が電車の床をフワフワしているとしたら、けっこうグロです。それも数人分。箒もチリトリもないのにどうやって掃除した? いや、たまたま数日前、現実の床屋へ行ったもんで実感。髪の始末ってけっこう大切なんですよね。

このドラマ、こうした細部が惜しい。大きな構成が素っ頓狂なんだから(なにしろ未来ワープ)、せめて細かいところは真面目につくらないといけない。そうしないとアホらしくなります。

そういえば、漂流して何日もたっているのに主役級のオトコたちに無精髭は生えない。着ているものもほとんど汚れない(中年役者はもちろんヒゲだらたけで衣服も汚い)。女性はメイクが崩れないし。水や食べ物も、たしか付近の木の実かなんかを小鳥みたいについばんでるシーンは少しあったけど、他に何か食料があったっけ。みんな元気です。

数日前には雨が降ったはずなのに、森の中でなぜか乾いて手頃な火きり棒と板材が手に入る。準ヒーロ(赤楚衛二)が必死になって依怙地にマメだらけの両手でゴロゴロと(一日中)きりもみやってると、ついに火がおきる。それも夜になってから(夜は湿気が出るんで通常は無理)。熱意は通じるんです。

そうそう。長いツタのロープとか竹の鳴子とかモロモロ登場。竹コップもあったかな。ちなみに竹を輪切りにするの、ものすごく難しいです。大型ナイフくらいじゃまず無理でしょう。まっとうなノコギリがあっても簡単じゃないです。同じことをDASH島の連中にやらせてみてほしい。

もっとひどいのが地図ですね。たしか何日かかけて大きな林の東西南北、あちこち探索しつくしたはずなのに、なぜか未探索の方向モレがあったらしい。なななんと、谷川が流れていた。何日か前、消防士の赤楚衛二が仲間のため水を求めて、英雄的に崖を登攀したのは何だったんだ。

とかなんとか。よくまあこんなに都合のいい脚本をつくった。他がそう悪くないだけに、ほんと惜しいなあ。

古川琴音、ほんと最近よく見ますね。特徴的な風貌なので、覚えた。

 

ここ数年の課題だった「鉢の植え替え」がようやく終りました。

思い立ったのが何年前だったか。根が詰まってぎっしりになった鉢植えをなんとかしようと考えるんだけど、なかなかできない。腰が痛くなるだろうな。土の始末が大変だな。爪が汚れるなあ。面倒だなあ・・・・。で、何年経過してしまったか。

まず、マンション住まい故のネックだった古土の始末問題が解決しました()。関西の専門業者に代金を払い込むと、宅配の送り状とポリ袋を届けてくれる。で、用意したダンボール箱に土を詰め、宛て先払いの送り状を貼って発送する。これだけです。たしかダンボールひとつで15キロまでだったか、20キロまでだったか。

土の問題が解決したので、気分が楽になりました。前もってレジャーシートを用意し()、好天の4月、吉日を選んでオリズルランシャコバサボテンを植え替え。やたら鉢からはみ出していたのを整理して、数本に減らす。ついでに枯れかかっていた(実は葉が白く粉をふく)チェリーセージを廃棄。

dianthus.jpg一鉢減らしたので、その代わりにダイアンサスの小さなのを植えます。ケーヨーデーツーで買ったんですが、要するにナデシコのようですね。1年をとおして適当に咲くらしい。

これだけで股関節が痛くなったので小休止し、また数日おいて、今度は旺盛なクンシランに挑戦。大型の鉢いっぱいに根がまわっていました。恐ろしいくらいビッシリ生えたその根をゴッソリ切って減らして、二本ほど選んで植え替え。やれやれ。

かなりスッキリしました。たぶん4年か5年越しの借金を返したような気分です。

 

土はゴミとして処分できません。もちろん公園に捨てることもできない。じゃどうすればいいの?と聞いても、行政の答えがない。変な話なんです。しかし何年か前、ようやく処理してくれる業者がネットに登場しました。安くはないけど、ま、仕方ないでしょうね。ありがたいです。

ベランダに土がこぼれて汚さないため。丈夫なシートを敷くと非常に便利です。いちばん安くて小さいのを購入。

 

先日朝日新聞に掲載の「岸田官邸の実像 追従」が面白かったので、読み直し。御厨貴氏へのインタビューらしい。(要旨。敬称略) 


 一国の首相として・・・物足りない。何かにかける情熱が見えない。「この時代に政治はどう対応していけばいいのか」といった発想が見えない。

 コロナでもウクライナでもG7でも、利用できるものは徹底的に利用する、その精神はすごい。だからあっという間に原子力政策をひっくり返す。そのスピードがすごい。状況追従主義は、もの深く考えないから早く結論が出せる。そして、何を言われても動じない。あまり前途を心配しないタイプなので、その点では生まれついての宰相なのかも。

歴代首相と比べて・・・誰にも似ていない。ここまでノンシャランとしている人はあまりいなかった。自分に能力がないことを感じている首相はたくさんいたが、その能力がなければ誰に任せるかを考える。海部俊樹は党務を小沢一郎に。宮沢喜一は党務をぜんぶ竹下派に丸投げした。

 岸田も海部や宮沢に本当は近いはずだが、唯一違うのは、自分の足らないところを深く考えない。どうしたらいいのかと思っていない。やれると思っている。プラス思考。

 本人は外交に強いと思っていて、外国首脳との会議にも動じないところはすごい。こういうタイプはなかなかいない。中曽根、小泉、安部もそういうタイプだったが、個性も強かった。岸田は個性はあまりないが、それを発揮できる。

 物に動じない性格は、今のような危機の時代には安心感を与える。「この人に任せておけばそう間違いはないだろう」と思われているところが強み。

ただ原発事故や戦争、対中関係などで何か大変なことがあったとき、この政権は意外に弱いのではないか。大変なことがないことを前提に、いまの状況だけで政治を考えているように見える。

 官邸は「安部官邸以前」に戻った。官邸が相対的に強くなっているのは間違いないが、安部のように各省で優秀な官僚を個人的に官邸に連れてきて、徹底的に働かせ、各省とは対立。そういう発想はない。やはり「宏池会」なので、官僚をうまく使い官僚との関係を政治にうまく生かしていくのが特徴。

 ではこのままでいいのかというと、なかなか難しい。安部によって相当傷つけられた(官邸を含めた)官僚制が、傷を癒して元のように戻すべきかというと違う。


うーん、最後の「元のように戻すべきかというと違う」の部分は少し意味不明ながら、それ以外は納得でしたね。御厨と言う人、皇位継承問題では有識者会議座長代理で、なんか拍子抜けの結論しか出さなかった人ですが、この記事は面白かった。
 

偶然チャンネルをまわしたBSフジのニュース番組、プライムニュース。司会のオッサンは下向いて恥ずかしそうに話すクセの人で、だいぶ前から馴染みです。(なんと報道局解説委員長だったらしい)

ま、フジにしては鋭く(というほどでもないか)多少は切り込んだ解説もする番組だと思っていますが、たまたまこの日はゲストが秀逸だった。北大の長谷川英祐という人。若くはないようですが肩書は準教授。長袖の上に半袖、ポニーテールの長髪。ただし発言は落ち着いていて、非常に論理的です。

えーと、後で調べたんですがこの日のテーマは『2050年に1億人割れか 生物学で考える人口減 少子化対策なぜ空転?』だった。なるほど。長谷川センセイは動物生態学が専門。勤勉と思われている働きアリに、実は一定の比率でサボっている連中がいるという研究です。なんかそれ、前に聞いたことがあります。

意外なことに、勤勉なアリだけ集めた集団にしてもやっぱりサボるアリが出てくる。逆になまけ連中だけにすると、一定の比率は急に勤勉になったりする。つまりどんなときでも、一定の割合の集団はなまけているんだということ。こうした仕組みの社会が実は効率がいいのかもしれない。全員が熱烈作業では続かない。もちろん全員がなまけたら滅亡する。実に面白いです。

で、話はそれではなくて、このセンセイの考える人口減の将来、少子化対策ですね。実に明確なんです。理系ふうで非常に冷徹。このまま進めていったら日本は消える。ま、人口グラフを見たら誰だってそういう結論になるんですが。なぜか政府とか自民、マスコミも国民もあんまり真剣に考えない。辛い現実を見ないように目をそむけ続けてきた。

ふだんは落ち着いたふうの司会者、今回はけっこう焦ったように見えました。なんせライブ放送の番組なのに、たぶん予想とは違う展開になったんでしょうね。甘かった。長谷川センセイの主張を認めると、将来にまったく救いがないことになる。いや、本当はまだあるんですが、そのためには非常に大きな方向転換、政治的決断をしないといけない。微修正程度ではまったく不可能。政府の責任。マスコミの責任。国民の責任。できるもんか。

個人的な感想としては、もうここから人口増への転換は無理でしょう。本当は秋の暮れのような、穏やかで暮らしやすい中級国家を目指すというのが賢明な気もするんですが。はて、そういう「決断」ができるかどうか。

センセイ、自分の言っていることがキツイのは承知のようでした。「これを言うと叩かれるんですが・・」と前置きして発言することが多かった。でもこのままボーッとして過ごしていたら日本が消えるのは当然。
では昔の女性はなぜたくさん子供を産めた? はい、社会がそういう作りで、専業主婦だったからです。若くから産みはじめることを要請され、産んでからも家族ぐるみ、爺さん婆さんも総動員で育てた。だからたくさん産めた。育てられた。

なるほど。就職しろ。働きながら子供を産め、ひとりで(あるいは夫と共同で、家族で)育てろ。たくさん産め。これは無理ですね。実態と乖離している。

一案として、経験のあるオトシヨリたちが保育にあたるという考え方もあるんだそうです。もちろんボランティアではなく、ある程度の収入を担保。母親は仕事が続けられる、オトシヨリも喜ぶ。昔なら爺さん婆さんが家族として担当したことを正規の「仕事」として担うわけです。とくに国民保険の年金受給者は助かるはず。この仕組みができれば婚外子が増えてもなんとかなるはず、若い母親が嬰児を殺すこともなくなる。安心してもう一人産める。

フランスの出産率が高いというけれど、実は移民がたくさん産んでいる。生粋フランス人の子供が増えているわけではない。それでいいんですか?と司会が聞いたのは、さすがフジテレビです。はい。政治的には問題かもしれないです。でも「それがなぜいけないんですか」と答えるのは理系「動物生態学」のセンセイです。これはこれで正しい。

最後に少子化対策がすすまないのは「もしかしてマスコミの責任もあるとお考えですか」と聞いたのはなぜだか。聞かれて、ちょっと遠慮がちながら「はい」とセンセイはお答えでした。はい。

蛇足ですが、実はもう一人、心身健康科学科の若いセンセイも呼ばれていましたが、可哀相に。隣のセンセイが容赦なく鋭く断言するので、なんかつまらない役回りになってしまった。すごく発言に苦労しているのがよくわかりました。ときどきはヤケ気味に「私には解決策がわかりません」とか。

たのしい番組でした。

 

大河ドラマは来年が紫式部。これもかなり恐ろしいけど、その次が「蔦屋重三郎」だそうです。

うーん、蔦重か。とりあげる人物はいいんだけど、なんせNHKだから。脚本が森下佳子。時代物では「JIN 仁」とか「おんな城主 直虎」とか「大奥」とか。決定的に悪くはないはずだけど、うーん、散々騙されてきた大河だからなあ。

「直虎」式にちょっとブッ飛んだストーリーになりそうで怖いです。ブッ飛ぶ、つまり見ようによっては軽薄。主役が(よく知らんけど)横浜流星だし。やたらネームバリューのある時代人が次から次へと顔を出して、次から次へと派手なエピソードてんこもり。田沼意次だ、松平定信だ、愛だ、恋だ、歌麿だ、写楽だ、馬琴だ、一九だ、手鎖だ・・・。うーん。

決して期待しないでおくことにします。(今年の家康が想像を越えて、予想以上にかなり悲惨なので)

 

せっかくの好天連休、どこかに出かけてみようという話になり、なるべく歩かなくていいという条件で絞って奥多摩あきる野、武蔵五日市へ。たぶん直通なら40分もかからないんでしょうが、乗り換えもあるのでほぼ1時間強。半袖がちっとも涼しくないバカ陽気でした。

kurochaya2023b.jpgで、武蔵五日市の駅からは送迎バスで10分ほど、「黒茶屋」という懐石料理の店があります。店というより、ま、庄屋作りの古民家ですね。板敷きが黒光りする大きな屋敷で、築270年とか書いてありましたが、山里料理とでもいうんでしょうか、山菜とか川魚とか、もちろん山のものではないサーモン刺身とか肉なんぞも少し。

これが思ったより美味しい。なんせ会席形式なんで、チビチビと食べているうちにけっこう腹が満ちてくる。ついつい食べ過ぎました。最後のお雛さま用みたいな鰻茶碗と緑色の山菜ウドンで、完全にとどめを刺された。

おまけに帰路の道路が混んでいるし(連休だから当然)電車もそこそこ人が乗ってくる。ずーっと立ちっぱなし。家にたどり着いたときには完全に疲労困憊です。日頃のサボリがたたって足がなまってるからなあ。股関節まで痛む。足が少しフラついた。

ま、記憶に残るGWの一日となりましたね。翌朝目がさめてから、ああ、胃が軽いってなんと気分のいい・・・と実感した次第です。贅沢の極み。

kurochaya2023a.jpg

 

 

tokyozeronen.jpg集英社★★

赤川次郎というと何を読んだかなあ。初期の頃、なんか団地ものを読んだような記憶がある程度。代名詞らしい「三毛猫ホームズ」シリーズは知りません。

気になって調べてみたら「セーラー服と機関銃」もそうだったんですね。たしか電車の中で読み切るような軽い小説でした。そこそこ楽しかったかな。あとは知らん。

で、この「東京零年」、2016年の吉川英治文学賞に選ばれた。ふーん、です。赤川さん、あんまり賞には縁のない人のような気がします。

中身については、うーん。けっこう厚い本ですが、さして言うほどではありません。ま、日本が秘密保護法とか共謀罪とか、どんどん押し進めていったらこの「東京零年」の世界になる。ま、数十年後という設定でしょうが、今でもけっこう近いですね。

絵に書いたような検察の大物とか暴力刑事とか反戦デモを計画する活動家とか金で買われたジャーナリストとか裏切りとか。

そこそこ面白いですが、なんせ赤川次郎の世界なので妙に軽いです。犯罪人やら裏切り者やら、殺人、浮気、若い恋、家庭内暴力、みーんな景気よくテンコ盛り。そんなに深刻じゃない。怖くない。あちこちの矛盾や設定のほころびは気にしないことです。

 

shisho2023.jpg岩波書店★★★

最近の閻連科はなんかブッ飛びすぎて、非常に読みにくい感があったのですが、この「四書」もその系列。ただしメッセージは明白です。毛沢東の「大躍進」とその後に続いた「大飢饉」ですね。

党の方針に反した(あるいは誤った思想の)知識階級は更生区に送り込まれます。そこで学習して正しい共産者義者になりなさい。黄河のほとり、いちばん端に設営されたのが第九十九更生区で、「作家」や「宗教」や「学者」たちはお上から遣わされた「こども」の指導のもとに生産と学習、更生にはげみます。

すべては神話ですね。あるいは聖書の世界。では「こども」とは何であるかが問題なんですが、よくわかりません。お上の子=神の子ともいえるし、未熟な紅衛兵でもある。指導は厳しいけど、心は「善良」です。すべてよかれと信じて監督する。もし自分が間違うようなことがあれば「この押し切りでオレを切れ!」と指示します。あるいは「この銃で撃て!」「ただし必ず前に倒れるように殺せ」。日本兵と戦って勇敢に死んだ、かつての共産軍の英雄の姿です。

1畝で何斤()の小麦を生産できるか。がんばっても300斤くらいと申告するんじゃ愛国者とはいえない。思い切って500斤か、いや800斤。お前だけが500斤なんて言い張ったらみんなが迷惑するぞ、さ、どうする。それどころかどこかの更生区は1500斤と主張したらしい。いやいや5000斤。1万斤という申告もあったらしいぞ。

こどもは思い切って「我が更生区は1万5000斤生産する」と申告して英雄になる。地区や省から褒められる。この調子で頑張れば中南海でメダルがもらえるかもしれない。

メダルシステム。こどもが認めると赤い紙の小さな花をひとつもらえる。小花が5つたまると中花がひとつ。中花5つで大花。大花メダルが5つなら更生区を出て家に帰れる。つまり125の小花で妻子のもとに戻れる。最初はバカにしていたものの、そのうちみんな花集めに目の色を変えます。隠しておいた非共産主義的な本を差し出すと花1つ。大切な聖書にしょべんかけると花5つ。

「学者」と「音楽」は好きあっています。なんせ「音楽」なんで、まだ若い女性。二人は密通関係をあばかれて筒帽子のさらし者になって「反省」させられます。文化大革命のときのお馴染み吊し上げですね。密告した「作家」は待望の花をたくさん獲得。

やがて鉄の大生産指令。国中の鉄製品をレンガ製の高炉にほうりこみ、粗末な銑鉄を作る。次は鋼の指令。しかたない、温存しておいた良質なカマやスキを使ってハガネ塊を提供する。国中の木を切りつくし、クギから蝶番まであらゆる鉄を使い果たす。山から樹木が消えて、川が氾濫する。洪水。スズメを殺して害虫ははびこり、作物は枯れはて、やがて飢饉。

最後は想像どおり、人肉喰い。だからといってが彼らが更生区を抜け出すことは許されない。区から出てはいけない、部外者に実情を話してもいけない。その場にとどまって飢えよ

結末らしきものはありますが、うーん、難しいです。英雄的ともいえるし、不可解ともいえる。中央へ嘆願に出向いて帰った「こども」は、最後に自ら十字架にかかる。リアリズムではないんです。すべて神話の世界。

閻連科の新刊はたいてい刊行に苦労しますが、それでもどこかに出版してもらえるのが普通。この「四書」は国内すべての版元が刊行拒否したそうです。危険きわまる。珍しいケースらしいです

畝=日本の畝(セ)とはまったく異なる単位で「ムー」。だいたい6アールらしい。日本の「1反=田んぼ1枚」の3分の2程度かな。

1斤=160匁。1匁=3.75グラムなので600グラム程度。昔ならお店にいって「砂糖1斤ちょうだい」なんて。このへんの計算、尺貫法からメートル法へ移行期の子供たちはさんざん計算させられました。

300斤なら180キロで、ま、常識的収穫量ですが、1万5000斤というと600グラム×15000=9000キロ。はい、だいたい9トンです。

(現代ニッポンでも10アールあたり収量300kg強という数値がありました。これを中国式の「畝」に換算するとやはり180kgですね。このへんが普通なのか)

 

kitorabokkusu.jpgKADOKAWA ★★★

池澤夏樹の小説。好きなんだけど、なぜか読みとおせない()。読了できたのはいちばん最初に出会った「マシアス・ギリの失脚」と「ワカタケル」くらいじゃないかな。あとはみーんな全滅。

で、この本。ま、「ワカタケル」の系統ですね。遣唐使として大陸にわたった阿部一族の青年。壬申の乱。貴人はキトラ古墳らしきところに埋葬され、それを盗掘しようとする石堀りのオトコたち。出現した謎の巨大イノシシ。捨てられた剣と鏡

そして現代では博物館で仕事をする気弱なウイグルの女性学者。高校時代は豪腕投手として鳴らした地方大学の助教授(・・だったかな、講師ではなかったような気がするけど)。そして元刑事だった郵便局員は島で退屈している

で、北京中南海のオモワクやら日本の公安やら、怪しげな中国人バイヤーやら。ま、オトギバナシでもあり、国際スパイ小説でもあり。それでも池澤夏樹ですから、あんまり切迫はしません。なんかのんびりしている。

なんとなく適当に、楽しく読みました。

 

池澤のエッセイ、評論のたぐいはかなり好きです。理系ふうの部分がいい。

なんか匂わせるような記述があちこちあって「?」だったけど、やっぱり前作があったらしい。「アトミックボックス」というんだそうです。したがってこれは続き物。わざわざ読む気はありません。

 

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