「雪の階」奥泉 光

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中央公論新社 ★★★
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図書館の本棚、習慣的に新作をチェックする奥田英朗のすぐ隣に、この奥泉光の著作が並んでいて、間違わないよう気をつけているうちに名前を覚えてしまった。

で、いつだったか、新聞にその奥泉光のエッセー掲載。パン作りの話だったかな。けっこうセンスが良かった気がして、それで再認識して借り出しました。なるべく厚めの本を選んだわけです。

えーと、最初のうちはなかなか良かったです。戦前の伯爵かなんかの娘。一般的な美人じゃないけど、ま、変わった魅力がある。怪しいというべきかな。しかも理系で、碁とか数学とか。そんなふうがわりな華族のお嬢様が、実はしたたかというか、怖いというか。おもしろいキャラクターでした。

で、小説の中身は、ま、人死にもあり謎だらけでもあり推理小説でしょうか。そういう仕立てです。ただほんとうに推理ものかというと違って、半村良みたいなドロドロ伝奇小説の匂いもある。少し無理している感じもあるけど、ドイツでの優良人種論争とか、天皇機関説排斥問題とか、二・二六にむかって騒然とした(あるいは意気軒昂たる)当時の雰囲気はよくわかる。

そういう「雰囲気」を味わうのなら、けっこうお薦めです。場合によっては、簡便な昭和世相史としても読めるかな。


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