出さなかった手紙
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出さなかった手紙
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M子
フェリス女学院合格おめでとう。この2年間、ほんとうによく頑張りました。もちろんお母さんの協力があってこその、長い受験勉強でしたが、しかし実際に勉強し、努力しつづけたのはM子本人です。何回でもいい、おめでとうえらかったね、と讃えたいと思います。
199X年2月
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フェリス女学院に入学して1年が過ぎました。楽しそうな様子で、本当によかったと思います。良い友達と良い教師に恵まれていることが、M子の言葉の端々からも知ることができます。1年間の学業成績を見ましたが、とても立派なものだと思います。体を壊すほど勉強してではなく、自分のペースを守りながらのこの結果なのだから、十分評価してあげたいと思います。
199X年3月
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M子が広島へ社会科研修に出発して2日。お母さんと静かに過ごしています。家の中が少し静かになっています。2人前の食事をつくって、テレビを見て少ししゃべったり、早めに就寝したり。M子が巣立ったあとの老夫婦の日常が予想されるような数日です。
午後からの小雨が夜には雪になるだろうと天気予報が言っていました。広島の天気はどうだろう、とお母さんが問います。広島は晴れているみたいだよ、と返事をすると、そう、と答えたきり黙って食事をしています。一人酔った私が饒舌になっても、思ったより場がうるさくなりません。反響板が一枚足りないという状況でしょうね。
私は「寒くないだろうか」などとは心配しませんが、そのかわり「ま、いろいろ苦労してガタガタ騒いできなさい」といった心境でしょうか。嫌なことをいっぱい経験してくるといい、と思っています。今日もN駅まで迎えにいくと言っていたお母さんですが、路面の雪はもう溶けているのやら。「重い荷物をもって、凍えるなかを一人で帰らせたらいいだろ」と言いたいのですが、それを言わないで私も黙っています。
199X年1月
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補遺(2003/2)
社会科研修: 高1の冬、学年単位での「研修旅行」がある。社会科の単位として認定。遊びの部分ほとんどない修学旅行のようなものだろうか。
合格レーダー: 日能研の「合格レーダー」という冊子はずいぶん参考にしました。月1回、横浜の有隣堂で購入しました。通いはしませんでしたが、お世話になりました。
情報: 今振り返っても、中学受験は「家族総力戦」であり、かつ「情報戦」だったと思います。インターネットのない時代、いかに情報を入手するかは重要でした。受験した本人にとっては大学受験の方がはるかにきつかっただろうとは思いますが、こちらは本人の責任による戦いです。大学の場合は、妻はともかく私は完全に放置して、ただただ見守るだけの受験でした。
予習: 夏休みに理科の実験教室(楽しかったらしい)に通わせた他は、2年間、完全に自宅学習だけでした。月曜から土曜まで予習して、日曜に新横浜でテスト。この繰り返しです。ただ、このやり方は子供のタイプによりけりで、必ずしも万人に勧められるものではないと思います。たまたま、M子の場合は合っていたようです。それにしても、中学受験の算数は難しかった。理科(電気回路や滑車)もなかなかのものでした。時折、妻がどうにも手におえないと私にも応援依頼が来ましたが、たいていは私もギブアップでした。どうにもならず、四谷の教師に質疑の手紙を書いたこともあります。
賛美歌合唱: どういうふうにパート分けをしているのか娘に聞いてみたら、特に決まってはいないのだという。みんなが適当に判断して、どちらかのパートを歌う。それでうまくいくのか?と聞いたら「何をバカなことを聞くのか」という顔をされた。
英語教育: 入学前のしおりに「事前に英語の準備はするな。辞書も買うな」と書かれていた。授業参観に行ってきた妻の話によると、完全なオーラル授業(というのかな。Phonics?)で、最初から体を使って「A A A Apple!」とか「B B B Bag!」とか、大きな声で喚くのだそうだ。幼児の体操みたいに、みんな飛んだり跳ねたりしていたという。発音、簡単な会話、そして文法から入っていく仕組みのようだ。
後日、6年間使う副教材(対文部省的な表現。実際は教科書そのもの)のPROGRESSを読んでみて感心した。内容は実に面白い。デービー・クロケットの熊退治とか、入植者たちとポカホンタスの逸話とか、英米の文化的な背景もおのずと頭に入るようになっている。ただし文章量、単語量はすごい。NEW HORIZONの10倍くらいはある。これを6年間で6冊こなす中高はそう多くないというのも理解できた。
入学金25万円: 併設の大学との混同でよく誤解されるのですが、実際のフェリス女学院はお金のかからない中高です。もちろんお金持ちの子女もいます。しかし多くは普通のサラリーマン層の子供たちです。雰囲気もぜんたいに質素で、すべからく、お金がかかりませんでした。特に我が家は在学中も塾に行かなかったし。大学も6年かかるのだけは別として自宅から通学可能な国立で、実に安上がりな娘でした。
受験スケジュール(一部記憶は不明瞭)
2月1日 | フェリス(第一志望)受験 | ||
2月2日 | 湘南藤沢(第二志望)受験 | ||
2月3日 | フェリス面接 | ||
2月4日 | 神大付(抑え)受験 | ||
2月5日 | 中等部(難関)受験 | 神大付発表 | フェリス発表 |
--------終了--------- | |||
2月6日 | 湘南藤沢一次発表 | ||
2月7日 | 湘南藤沢面接 | ||
2月8日 | 中等部一次発表 | ||
2月9日 | |||
2月10日 | 中等部面接 |
この他に、遅いスケジュールで関東学院二次の入試もあったと記憶している。願書も用意しておいた。すべて落ちた場合はここが最後の望みとなる計算だった。
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志望学校補遺
当時の私たちが捕らえていた各校の印象を参考のため記します。あくまでも当時抱いていた印象です。
フェリス女学院
ずーっとあの特徴ある制服も知りませんでした。文化祭(フェリス祭)の印象が非常に大きかったと思います。後で振り返ると、たまたま見た5年生のときのフェリス祭が特に自由闊達ですごかった。生徒の自主性と自由が見ているだけで眩しいほど感じられました。
桜蔭中学
思ったよりは好印象を残した学校です。女性の独立をたたき込み、きっちり躾けてくれそうでした。日々のルーチンに乗っかっていれば自然に大学受験まで行けそうな雰囲気もありました。ただ、キチンとし過ぎて余裕のないようなキライがあり、わりあい生真面目なタイプの娘がここにはまったら、いっそう生真面目なままで育ってしまうのではないか。それが唯一の心配材料でした。
女子学院
判断材料はありません。素晴らしい学校ではあるのでしょうが、残念なことに奇妙に縁がなかった。
慶応湘南藤沢
まだ出来たばかりの一貫校だったと思います。自由な校風の中で伸び伸び育って、そのまま慶応まで行ける。決して悪くはない選択肢とは思っていました。しかしそれでいいのかなーという疑問をかすかに感じさせるのが瑕疵。
慶応中等部
基本的な印象は湘南藤沢と同質。ただ生徒に富裕層が多そうなのが、ちょっと腰の引けた理由です。貧乏人の子供が紛れ込んでも、あまり幸せになれないかも知れないな、と。また、実際のことは知りませんが、合格者のうち上位半分以上には位置していないと、必ずしも合格は保証されないような気がしました。卒業生の子女でもなし、スレスレ程度の合格点数では何がどうなってどうなるか・・。これは単なる印象にすぎません。ご容赦。
神奈川大学付属
こちらも出来たばかりで、これから躍進しそうな元気のいい学校でした。学校側から受ける雰囲気も上乗。おまけに家にも近いし、入ってもそんなに後悔はしないだろうなという印象です。ただ、行けるものならもう少し上を狙いたかったし、学校の周囲がまだ山ばっかりで超殺風景だった。
学芸大付属世田谷
なんといっても抽選があること。そして高校進学が保証されないこと。これだけがネックでした。共学でもあるし、その他はすべて文句無し。
関東学院大付属
よさそうな印象でした。明るくて、良家の坊ちゃん嬢ちゃんがたくさんいそうな雰囲気。ただ中等部ほどではないにしろ、我が家に合うカラーかなという不安が少しあったのは事実。
湘南白百合
真面目なお嬢さんが多そうなイメージ。カトリックですが、入ってしまえばそれなりに楽しい学校生活が送れることは間違いないでしょう。横浜共立か湘南白百合かというと、根拠はないけど共立ではビシビシやられそうな気がして白百合。ただ家からちょっと遠すぎた。通学距離の問題でパス。
(公開 2004.01)