録画してあった「ゴジラ」を視聴。第一作のゴジラです。主演は宝田明。恥ずかしいような美男子ですね。お嬢様役の人はなかかわからなかったけど、クレジットみたら河内桃子でした。当時の女優さんらしくワンピース姿のウェストが細い。
なんとなく見たことあるはずと思いこんでいましたが、実際には初見。なにしろ昭和29 (1954年)の公開。うん、自分はまだ小学校の低学年だ。映画館なんかに行けるはずがない。
で、最後は酸素のナントカを応用した新兵器オキシなんとかかんとかでゴジラは絶命する。ん? なんか火口に落ちて死んだんじゃなかったっけ。はて、とこれも調べてみたら昭和59年 (1984年)でした、第16作。通称が「ゴジラ84」。三原山にゴジラを誘導して火口に落とす。主演はたぶん田中健。ヒロインは沢口靖子。はあ、そういう時代か。
で昭和29年から59年の間はどうだったかというと、たぶん次々と制作・公開した。第2作から15作まで。だんだんゴジラがいいやつになって、つまりは面白くなくなって、その間にモスラとかアンギラスもいたんでしょうね。ザピーナッツが「モスラーやモスラー」と唄う(※)。
ついでですが、この初代ゴジラ、戦後9年だけど自衛隊が出てきます。ちっぽけな戦車も登場するし、オモチャみたいな戦闘機も飛ぶ(※)。ちょっと不思議で年表調べたら、下記のようでした。
経緯、忘れてるなあ。
■昭和24 (1949) 湯川秀樹、ノーベル賞
■昭和25 (1950) 朝鮮戦争(※)。マ元帥の指令で警察予備隊。黒沢明、羅生門
■昭和29 (1954) 第5福竜丸、被災。 自衛隊発足。初代ゴジラ公開
■昭和32 (1957) 南極一次観測。宗谷、オビ号に救出さる
■昭和35 (1960) 全学連国会へ突入。東大生死亡
■昭和39 (1964) 東京オリンピック
■昭和59 (1984) 第16作 通称「ゴジラ84」公開
※ピーナッツがなぜか映画ではきれいに見えたので子供心にびっくりした。
※戦闘機が頭のまわりをぶんぶん飛ぶと、ゴジラはうるさそうで海に退散します。
※子供のころは「朝鮮動乱」でした。マーカーサー、新聞ではいつも「マ元帥」。新聞見出しに記憶があります。日本でいちばん偉かった。
中央公論社★★★
このところ永井路子の奈良ものを続けて読んで、いささか疲労というか飽きた感かあります。 藤原仲麻呂・鑑真の『氷輪』。その前が藤原不比等と蘇我系女帝の元明・元正の抗争『美貌の女帝』。ま、どちらも知らないことばかりで、その意味では面白かったんですが、でも地味です。
それは別として、もっと分厚いのが第5巻『この世をば』です。もちろん道長ですね。舞台は平安だし資料も多くて、エピソードもてんこ盛り。本のボリウムもすごいです。800ページはある。当然、読み終えてはいるんですが、不思議なことに記憶がない。ない。
あ、もちろん少しは覚えています。最初のほうの50ページくらいかな、左大臣家の長女・倫子のところにボーッとした右大臣家の三男坊道長が恋の歌を贈る。うーん、あんなやつはダメだ!と父親の左大臣がいやがる。ま、そのへんだけ。
しかしそのほかの部分、なぜか記憶がスッポリない。不思議です。ほんの半年前に読んだはずなのに・・・。
アホらしいとは承知ながら、また読みなおしてみました。800ページは重いです。膝の上においてもズッシリ。手が疲れてくる。自分で呆れながら、でもなんとか読破しました。初めて読むような気分です。
内容についてもここの感想と同じですね。違いがあるわけがない。で、再読したことを後悔はしていません。面白かったです。
あらためて納得したのは一条天皇と道長の間をせっせと往復した蔵人頭(くろうどのとう)藤原行成のこと(※)。この人の業績というか貢献度はすごかった。平安の政治はこうした優秀な秘書官役や皇太后クラスの女性の権威に負うところが多かったんだ、と永井さんは書いています。従来の研究書ではあまり重要視されてないけど、非常に重要。潤滑油。こうした急所の位置に有能な人がいないと、その政権はふるわない。すぐダメになる。
※蔵人頭。夜中だろうが朝だろうが「伝えよ」と指示あがればすぐ往復する。天皇だって、必要なら寝ないで待機している。平安のエリートたち、遊びも仕事も夜を苦にせずせっせとこなしていたんですね。周辺の女房たちも同様。夜更かしは平気だった。
この前読んだ田辺聖子の『むかしあけぼの』でも、やたら大殿油(おほとなぶら)という言葉が出てきました。灯台。明るかった。みんなせっせと活動していたということなんでしょうね。
中央公論社★★
全集の第一巻におかれたのは「氷輪」。ひょうりん と読むんですかね。小説ではなく、歴史解説というか歴史解釈というか。
鑑真が登場します。あまりにも有名な人ですが、その実、あんまり知られていない。日本に来た。歓迎された。・・で、唐招提寺が建てられた。その程度です。日本でどう迎えられたのか、どんな成果をあげたのか。どう没したのか。
で、想像通りでしたね。大唐からの渡日なんで、もちろん歓迎してもらったようだけど、でも本当のところはかなり温度差があった。『戒』を授けるってのは日本の帰依者が考えるような簡単な「賞状」じゃなかったようで、たしか5年だったか。5年がかりで必死に学んで、ようやくひとつ進級。ちょっと学校に通ってすぐ免状というような安易な代物ではない。少なくとも唐僧たちはそう思っていた。
唐僧たちと日本の僧・政治家の間には根本的な考えの相違があったわけです。
日本側の代表が藤原仲麻呂と東大寺の良弁。良弁ってのは、どこかの田舎で母親が畑仕事をしているすきに、大ワシにさらわれた。ワシはお寺の高い杉の梢に赤ん坊を置き去り。鳴き声を聞きつけて寺のものが救出して、そこで育てる。立派なお坊さんになりました。という話、子供のころに読みました。
で、その良弁はやがて出世して東大寺開山。悪い人ではなかったんでしょうが、原理主義的なことをいいはる唐僧たちにはたぶん迷惑した。日本には日本のやり方があるんです。結果的に「良弁・東大寺」と「鑑真・唐僧」はギクシャクする。
で、政治の世界は藤原仲麻呂。永井さんの見立てでは、日本人には珍しい完璧主義者。鑑真をある程度は庇護していたし、同時に良弁を重用もしていた。で、当時の女帝である孝謙天皇(従姉妹です)をカイライに仕立てて、実質的な仲麻呂王国をつくろうとして、ほとんど完成しかけた。
そこに出現したのが予想外が弓削道鏡です。永井さんの本には、悪人は登場しません。仲麻呂も良弁も道鏡も、ま、ふつうの人間。ずるいことも考えるし、良いこともする。で、たぶん生真面目な道鏡と世間しらずの孝謙天皇が男女の仲になってしまった。中年の恋は激烈です。常識がないんです。どんどん出世させたい。
アホな世間しらずがなにを増長、押し潰してくれようぞ・・とクーデターの計画たてた仲麻呂なんですが、上手の手から水がもれる。意外や意外のハズミで、何も考えていないみたいな孝謙に、仲麻呂勢は連戦連敗。ついに琵琶湖のほとりで敗死。
和気清麻呂がナニしたとか吉備真備がドウしたとか、ま、たいしたことじゃないようです。要するに実力者・仲麻呂が倒れた。アハッハと笑っていた孝謙は重祚して称徳天皇になったけど急逝する。その後は吉備真備の時代になるかな?だったんですが、真備の推した天皇候補(老齢だった)が意外なことに辞退し、結果的にまた藤原一派の時代に戻る。ただしもう長男武智麻呂の「南家」ではなくなりました。
で、ずーっと静かにしていた鑑真は、唐招提寺で没。この唐招提寺、いまの規模で考えると少し違うみたいです。かなり貧しい。小規模。鑑真の彫像を作成するための漆の入手にも苦労したようです。念願の金堂が建てられたのはだいぶたってかららしいです。
ま、そんなふうな本でした。読むのにかなり苦労します。
浮世の義理で、ときどきはスマホでメールを書きます。メールというか、いわゆるSMSですね。ショートメッセージサービス。人に「LINEやってる?」とかよく聞かれますが、LINEって、基本機能はたぶんショートメールですよね。違ってるかもしれませんが、SMS = LINE と勝手に解釈しています。違うのは囲い込み機能の有無、グループ機能があるかないか、かな、たぶん。
ま、そういう次第で,たまには文字を打ちます。ブラウザを立ち上げて、検索することもあります。そうしたとき、困るのが文字の入力方法。
たいていの人は上下左右に指を走らす『フリック入力』みたいです。すごいスピードで打ってる。なるほど、と理屈はわかりましたが、いまさら新規に覚えるのは面倒。それでパソコンと同じ『Qwerty入力』にしています。これなら一応は打ち方を知っているし。
ところが、やってみると非常にストレスです。誤入力。
間違ったキーを押したのなら当然ですが、正しくタッチしても違う文字が出る。わざわざタッチペンを使って正確に、垂直に触れても、隣の文字が出る。早く打つとエラーが増える傾向のようなので、アホらしいけど丁寧に、ゆっくり打つ。それでも、1行に2文字くらいは間違う。精度が足りないんですね。
なんとかならないのかなあ。次に新機種を買うときも、これがあるので幅の狭いスマートなのはダメ。なるべく画面幅が広い(キーボードが大きい)のを選ぶしかない。なんか不本意です。
三連休の終わり。前日に続いて絵に描いたような絶好の秋晴れ。
妻から誘われて、珍しく散歩。といっても隣の駅まで歩いて、そのへんの店を見て帰るだけのことです。風が強いので用心してウインドブレーカーを羽織ったけど、余計だったようで汗ばみます。
駅の近く、何かの機会に食べログで見かけたことのある有名ラーメン店の名前。ただし10人くらいが並んでいる。無理々々。
そこから少し歩いたところの家系ラーメンに入りました。中は一人で切り盛りしているようで、大きな寸胴に少し錆があったり椅子のシートにガムテープ補修があったり。ま、キレイとはいえないけど特に文句もなし。ふつうラーメンのチケットを購入。650円。
濃厚でおいしいスープでした。短く刻んだほうれん草が少し入っていて、これが意外に美味い。大きな炊飯器が置いてあり、みんな自由に飯をよそっている。何杯でも自由らしい。食べ盛りの学生たちは嬉しいだろうなあ。コスパ最高。こういう店、自分の若いころ近くにあったら絶対に通う。
炊飯器の横に「食べ残し厳禁」と書いた紙が貼ってありました。当然ですね。家に帰って、買ったばかりの歩数計をみたら9500歩。よく歩いた。
今年の大河ドラマ「光る君へ」。もちろん不満はいろいろありますが、ま、ガマンの範囲、けっこう楽しみに見ていましたが、うーん、だんだん酷くなる・・。
ついに諦めました。どうして何がなんでも男女の話にしてしまうんだろ。天下の左大臣がなにかというと自分の娘である中宮(彰子)付きの女房(藤式部)を訪問。ちなみに中宮の住まいは藤壺、つまり後宮といってもいいでしょう。そういう宮中の「女性区画」のいわば使用人住居に総理大臣クラスの中年男がやってくる(※)。で、その女房と二人っきり、いつも訳ありげに相談している。やはり問題ですわな。
先日は式部の娘の家に、街で出会ったらしい若い武者が飯をたべに寄っていました。式部の父親はたしか先の越前国司。従五位くらいだったな。立派な貴族です。一介の下っぱ武者が、家の娘に誘われたから「飯を食いにきた」などと屋敷の門をくぐれるものかどうか・・。
ま、こういう「常識」を堂々と無視するのが、立派な脚本家の気負いなんでしょうね。三条天皇の中宮らしい女性(たぶん道長の娘、妍子)が御簾の中からこっそり出てきて、いきなり敦成親王(たぶん)の後ろから迫って「好 き!」とモーションかけたり。あほくさ。ちなみに敦成親王というのは三条天皇の皇子です。つまりは亭主の子供。自分の義理の息子。
だめだ、こりゃ。
※実際には女房たちのところへ、若い貴族なんかよく遊びにきてはいたようです。一種の社交界ですね。各房の仕切りはないも同然なので、誰が誰のところに来ているかは、たぶん公然の秘密。
中央公論社★★★
系図というもの、通常は男系です。誰それに何人の子がいて、その長男には何人の子女がいて、そのまた次男がなんとかかんとか・・・。で、その次男とか三男の横に妻の名が記され、小さく「どこそこヨリ・・」とか記してある。ま、場合によっては、その奥さんの実家の簡単な系図が付記されることもある。
こういう家系図で歴史を眺めていると、ときどきワケがわからなくなることもある。はて、この嫁さん、どこの家から嫁いだんだっけ。前にも同じ家から誰か迎えていなかったかなな。
飛鳥時代あたりの歴史を眺めていて、永井路子もそう思ったんだそうです。このナントカ天皇の母はたしか蘇我のクジラの娘だったな。ん、その弟の奥さんも蘇我。蘇我のシャチだったか。
で、登場する女性たちの側から系図を作ってみた。誰の姉がどこに行き、妹がどうして姪がなにした。こうして一覧してみると、意外や意外の事実がわかった・・そうです。つまり壬申の乱から、あいつぐ政争。持統天皇あたりから聖武天皇あたり、そして長屋王の死まで。カギになるのは蘇我氏の女性たち。
中大兄がクーデタで蘇我氏を粛清し、以後は天智と鎌足の天下。白村江で唐に大負けし、天智・天武兄弟の抗争があり、天皇側は天武の後家の持統が奮闘したり元明、元正と地味な女帝が続いたけど、やはり藤原の隆盛には抵抗できず、藤原にのっとられた。ま、たいていはこんな理解でしょう。あまり資料もないし、よく知られてもいない。私もよく知らない。
一般には『天皇一派と藤原氏の勢力争いの時代』と見られてるんだそうですね。結果はもちろん藤原が圧倒。鎌足の息子の不比等が土台をつくり、その4人の子たちがブイブイ言う。四兄弟とも流行り病でなくなるけど、藤原の血の聖武天皇の御世が続いたので、あとはもう万全。ずーっと後には藤原北家(四兄弟の次男・房前の裔)の道長なんかが満月みて歌を詠んだり。
しかしここに『蘇我の血』という要素をくわえると、様相がガラリと変わる。つまり延々150年近く、歴代天皇の母親は蘇我の女性たちだった。女系の系図をつくってみると、それが如実に判明なんだそうです。なるほど。
そう考えると、この時代は持統、元明、元正という蘇我系の女帝が必死に藤原と戦い続けた時代でもあった。蘇我系の皇子を天皇にすえる。藤原の血を入れないように抵抗する。実は鎌足の死後の一時期、藤原はかなり落ち目だったらしい(※)。で、そこから復活したのは不比等の力。
そうした必死の抵抗が終焉したのは長屋王の変(※)。長屋王は高市皇子の長男です。高市皇子は天武天皇の長男です。天武系はアンチ藤原でもあったので、実力者である長屋王の自死で蘇我復活の可能性が消えた。ついでにいえば元正女帝の妹は長屋王の妻でした。これも同時に死んでいます。
で、当時の天皇(聖武天皇)の母は不比等の娘。皇后(光明皇后)もまた不比等の娘、聖武の母の異母妹です。そして光明皇后の生んだのが孝謙天皇。完全に、二重三重に藤原の血。こうして長い藤原氏の天下が始まった。
なるほど・・という視点でした。要するに藤原系の天皇即位を簡単に許さないための対抗措置として女帝が続いた、ということなんですね。おまけに彼女たちは『敗者』ですから、たぶん資料もあまり残っていない。地味な印象。
作者としては、この時代を書いた初めての作品らしいです。ボリウムは350ページくらいあるものの内容は少し薄いというか単調というか。分厚い一冊の後半にはまだ短編がいくつか載っているようですが、未読。
※そもその壬申の乱というのは、天智・鎌足一派(近江朝)が倒れたという戦争だったんですね。またこの結果として対唐政策が見直され、遣新羅使の時代に。その後に不比等が実権を握るまで遣唐使は廃止になっていた。
※長屋王のこと、ほとんどわかっていないようです。なにしろ総理大臣クラスが謀叛の疑いで反対勢力に攻められた大事件。妻(女帝の妹)も一緒に死んだ。ただほとんど資料がない。
ふと気がむいて、歩数計を買いました。シチズンのpeb TW310という名前です。
これ、ずーっと万歩計かと思っていましたが「万歩」は山佐という会社の登録商標のようです。パイオニア企業だったんでしょうね。一般的には「歩数計」かな。アマゾンなんかを見るといまでもyamasaの製品がたくさん並んでいます。あとはタニタとかオムロンとか。
すこし調べて、シチズンの歩数計にしました。少し高い機種(※)なので3Dなんとか。タテヨコどんな動きでもカウントする。ポケットやバッグに入れておけば反応する。ずーっと昔に買ったのは腰のベルトにひっかけておくような振り子感知タイプで、きちんと歩かないと反応しない。それが少し不満でした。
歩数と時刻だけのシンプルな機種です。表示文字も大きい。最初の10歩くらいは(歩行かどうか不明なので)様子見で反応しない仕組みになっている。けっこう賢いです。
ここ数年、ずーっと運動をサボっていました。足腰が決定的になまっている。今日も明け方、足をグイーッと伸ばしたらふくら脛がつってしまった。あはは。痛い。だらしないです。一念発起、買ってはみたけど、歩けるかな。自信なし。
※だいたい1000円以上くらいの機種は3D方向カウントみたいです。安いのはシンプルな振り子式カウントが多い。ただしメーカーやブランドによって精度はいろいろ。
早川書房★★
劉慈欣は最近評判(らしい)長編SF「三体」の作者です。名前、どう読むのかは知りません(※)。「三体」には多少興味があるものの、なんせ人気なんで、図書館ではなかなか並んでいない。といって予約かけるほどには関心がないし・・。
その劉慈欣のデビュー作がこれ。人気作家になったので、旧作に翻訳がかかったんでしょうね。訳は定番(?)、大森望です。
えーと、超新星が大爆発します。地球から数光年、ごくご近所の星です。そんな兆候があるんなら地球の科学者はずーっと前から予知していそうなもんですが、なぜか思いいたらなかった。
そういうことより、結果が大問題ですね。至近なので当然ながらナントカ光線が束になってグワーッと地球を覆います。で、そのナントカ光線はビルの壁を通し、深い洞窟も貫き。数時間にわたって地球に降り注ぐ。すべての生物が即座に死亡というわけではないですが、放射を受けた人間の体細胞は回復不能の損傷を受け、あと1年も生き続けられなくなる。
ところがドッコイ。12歳以下の若い細胞だけはその損傷を修復できるらしい。つまり人類の13歳以上はあと1年ですべていなくなる。残るのは12歳以下の少年少女、幼児だけ。
さて、どうなるか。これがテーマですね。
多くの国の政府は少年少女たちの短期育成にとりかかる。自分たちのやってきた「社会」「仕事」「インフラ」をなんとか引き継いでもらおうとする。もちろんスムーズになんてできないだろうけど、でも最低限最小限の継続はできるんじゃないか。文明は100年か200年の逆戻り。それとも1000年の退行か。それでもいいから生き延びてほしい。これが遺言だ・・・。
ま、そういう設定での小説です。で、最初のうちはおおかたの想像通り進行しますが、途中から不思議な方向へ曲がっていきます。「子供」は何をしたがるのか。どんな社会を欲するのか。あらら、あらら、というヘンテコリンな「理想社会」。子供は仕事をしたいのか。勉強をしたいのか。義務を果たしたいのか。遊びたいのか。アイスクリームを食べたいのか。少なくともまだ「恋」はない。
子供たちだけの中国、アメリカ、英国、ロシア、日本(※)。世界の「子供指導者」たちが子供国連に集まって何するんでしょう。もちろん集まるためには事前に「子供パイロット」が必要だし「子供整備士」「子供タンクローリー運転手」も必須。万一にそなえて「子供軍」も必要かな。「子供官僚」もいないとまずい。
ほんと、考えるだに大変です。だから途中で多少は省略。作中でも言及されていますがゴールディングの「蠅の王」を少し連想しますね。子供たちの王国で子供たちは何をしようとするか。この小説、もろもろ成功したとはいえませんが、作者は思い切って想像の羽を伸ばしてはみた。で、展開された未来国家の姿は・・・・。
ま、そういうことでした。たぶん感動はしません。少し呆れます。
※劉慈欣=りゅうじきん、リウ・ジシン、リウツーシン。いろいろ。
※若いころの中国人作家が日本にどういうイメージを持っていたか、けっこう面白いです。ちなみに日本の子供首相は日本刀が好きなようです。
幻冬舎★★
吉田修一は「国宝」とか「悪人」「怒り」などなど。読ませる作家です。ま、たいてい読んで損はない。
で、図書館で見かけて借り出したこの「ウォーターゲーム」ですが、うーん、なんというか。そりゃ面白いことは面白いですが、ハリウッド大活劇ふう。影のある青年、なんか怪しい美女、美人入れ墨師、超有能な産業スパイ、正体不明のマフィアホス、欧州の汚い大資本。アパートのベランダで涙をこらえている虐待幼女、必死に取材する女性新聞記者。
上手な書き手ですから、それぞれのキャラはたっています。魅力あり。そういう連中が次から次へと総登場で、舞台も九州、名古屋、プノンペン、バンコク、スイス、エトセトラ・・・。跳んだり走ったり爆破したりホールドアップしたり自家用ジェットでサーカスしたり美味いシャンパン飲んだり。
正直、あまり感動しませんでした。手抜き本。で、関係ないでしょうけど版元が幻冬舎ですか。冒頭にあげた三冊はそれぞれ朝日新聞出版とか中央公論。なんで幻冬舎から出すことになったのか。なんか合わない印象です。
吉田修一にしては駄作と思います。