早川書房★★★★
ちょっと前に読んだ「怪物たちの食卓」で取りあげられていた本。もちろん初読の作家です。
短編集ですね。「ピュア」は女たちが劇的進化して、やたら強い性になる。外敵と戦い、地球を周回する軌道上から世界を支配し、背中には装甲のような鱗をまとう。男を襲って精液を搾り取り、終わったら食い殺す。
子宮が「食え!」と命じるんですね。たぶん、地球が破滅に瀕し、人類の出生率がゼロになりかかったどっかの時代、そういう行為を始めた一部の女だけが妊娠に成功した。食うこと=人類の生存なんです。
というわけで軌道上の(女だけの)学校の教室、生徒たちは次の地上襲撃の話題で盛り上がったり。うん。妊娠して産んで上級女性になるんだあ。そう、男をつかまえて搾り取る。組み敷かれた男は「え、オレなの?」という顔をして、恍惚として放出して、食われる。
ま、そういうストーリーです。あっけらかんとして、悪くはないです。
ほかの短編は好きなクラスメイトが男になってしまう話。もうひとつの短編は男どころか異人種になってしまう話。ほかにもあったっけか。少女小説の雰囲気です。
で、いちばん最後の小編は冒頭「ピュア」の別版。食われる男の立場からみた世界ですね。これもすこし悲しい。全体、けっこう生煮え部分もありますが、ま、斬新、衝撃、新しい世界です。やはり★★★★でしょう。
今年は仙台・松島へ。
仙台、以前にも何回か素通りしたことはあったんですが、駅前のありきたりの印象だけ。今回は1時間ほどで街を一周するバスにのったので、あるていど雰囲気はわかりました(いい街ね、とあとで妻は言っていました)。
街中。ナントカ通りなど大きな通りの街路樹も悪くなかったんですが(杜の都ですか)、ただ、なんといっても暑すぎた。物好きに青葉城城址なんてのにも行ってしまって、暑熱にひたすら閉口。青葉城って、まっとうな山城だったんですね。
泊まった宿は湾に面していて、障子をあけると正面に島々。海。波ひとつない内海です。これはよかったです。食事もよかった。酔っぱらって部屋に戻ってバタンキューで、二日とも10時間か11時間は寝てしまいました。
ただメニューの酒はやたら高価なのばかりズラリ(※)。ただペラペラ別紙の隅っこには「熱燗」というのも一応あって、さすがにこれはリーズナブル価格だったものの、いやはや、ほんとうに熱燗だった。おっとっと、と思わず耳たぶに指をやるレベル。燗なんてつけたことがない若いのが多いんですかね。懲りて、翌日は「ふつう燗でね」とお願いしたんですが、それでも十分立派な熱燗でした。
そうじて良い旅でしたね。仙台、早い新幹線だと1時間半。近くなったなあ
(写真は松島観光船の船着き場。たくさん観光船が出ています)

※自分でも知ってる「浦霞」なんて、もうあほみたいな値段でした。ここ数十年で、日本酒の銘柄はみーんな代替わり。昔知ってたような日本酒は、すべて絶滅してしまったんでしょうね。なんだったっけかな、何十年も前、仙台の男が「旨口です」とか言って飲ませてくれた酒。けっこう美味しかった気がするんだけど。忘れた。
日曜は朝からVDSLモデム頓死に遭遇。対策に追われて大汗。甲斐あって月曜には新しいのが到着。
で、気を取り直す。懸案のスマホ2台、オンラインショップの複雑迷路をかいくぐって購入注文。なんとか成功です。で、モノは水曜には届いたんだけど、その日はあいにく炎暑のさなか、親戚と会食があって生ビール3杯と紹興酒。帰宅してダウン。
比較的スッキリ(前夜はさすがに晩酌が少なかった)目がさめた木曜は鋭意新スマホへのデータ移行を断行。やらなきゃいかんのよ。
ただこれがなかなかのものでした。電話帳がすんなりコピーできなかったり、SIMカードで1時間トラブったり。なんかごとのたびにオンラインショップにアクセスする必要があって、些細な用なのにいちいちセキュリティガードがかかる。えーい。
それでも夕方、いちおうは完了。うーん、脳が疲労困憊。もろにスパゲッテイ状態。力が入らない。ぐったりぐったり疲れました。
そして今日金曜。最後は自分用の新スマホに銀行関係アプリとPayPayを設定です。試行錯誤はありましたが、うーん、なんとか昼前に完了。
終わった。魔の六日間。もう死ぬまでやらん。誓うぞ。
ドコモのオンラインショップで数時間の格闘のすえ、自分と妻の新しいスマホを購入。いやー、大変だった。
なぜ大変かというと「セキュリティ」ですね。ガチガチの上にさらに親切にガチしている。PCからアクセスなんかじゃ問題外。自分のスマホのブラウザを使ってショップへ行く。それだけでもダメで「Docomo回線」を使用でないといかん。つまりWiFi使ってアクセスは通用しないんです。邪道。
訳のわからん「パスコード」とかいうのを苦労してあらかじめ設定しておいて、遅い回線でアクセス。そもそもが動きののろい古い機種(だから買い替え)なので希望機種を選ぶだけで大変。おまけに「機種変更」のつもりだったのになぜ「Xi→5G」になるのか。意味わからん。ひっかるたびに用語の意味を検索したり。同じことを何回やったかなあ(途中で止まったり消えたり)、ほぼ半日かけてようやく、たぶん、買えました。やれやれ。
実は同時に別件で、いきなりモデムの頓死もあったり。21年使い続けた年代物(※)のVDSLモデム、電話線のアナログをデジタルに変換する機器です。
で、スマホ握りしめて電話すること数時間。わけのわからない自動応答の迷路に見切りつけて、駅前のドコモショップに駆け込んで助けてもらって、ようやく人間オペレーターと話ができた。で、話がついたら翌日配送の手配で、迅速。これだけは少し感動しました。
届いた新しいVDSLモデム、差し替えただけで30Mbpsだったネット速度があっさり50~60Mbpsにはねあがりです。さすが20年の進歩。すごい。
※モデムはレンタルなので、壊れたら交換してもらえます。逆にいうと壊れない限りダメ(いかにもNTT)。壊れてネットや光電話が使えなくなったら、あわててスマホ電話で Docomoに申請して、DocomoがNTTに伝える。これ、不便だなあと思っていました。10年とか15年たったら(ネット不通期間を経ずに)交換申請できるといいんですが。
河出書房新社★★★
かつての政府のキャンペーンに「すばらしい中国のはなしを語る」というのがあったみたいで、それを皮肉っているんでしょう、たぶん。副題は「田舎町で聞いたこと」です。
で、最近になって自分は閻連科の本がどうも読みにくくなっています。なんでですかね。今回の「中国のはなし」もそうで、田舎に帰った閻連科のところに若い男が来て「面白い話を買ってほしい・・」と持ちかける。で、えんえんと話しだす。正直、あんまり良い設定とは思えません。
若い男(大学生)は父親を殺そうと決めた。理由は自分がアメリカに行って勉強することを承諾しないから。金をくれないから。とにかく、殺す。なんのこっちゃ。
次にはその父親が来る。その親父は女房を殺したくてたまらない。女房を殺せば電気屋の奥さんといい仲になれる。金持ちにもなれる、はず。で、次はその女房もやってきて、あの役立たずの息子、勉強なんて嘘ばっかりで自堕落女に子供まで産ませて。もう死んでくれないか・・。
みつどもえ。背景は中国の改革開放です。おさえつけられていた欲望が一気に解きほどかれる。むき出しになる。町を抜け出したい。レンガ造り、2階建ての家を建てたい。金持ちになりたい。発展とともにいろいろ願いがかなえられたように見えて、実はなにもかなってはいない。もとのもくあみ。
正直、あまり楽しい本ではなかったです。面白くもなかったし。満たされない熱量のようなものだけが、あとに残る。
角川書店★★★
えーと、ホラー大作なんでしょうね。長くて、面白くて、訳がわからない。
旧家にかけられた恐ろしい呪いです。戦国の世から続く深くてドロドロした呪い。家中にある呪物のかずかず(よくまあという数)。次から次へと出てきて、あれもこれも呪物、呪い。おそろしい。おそろしい。
で、あれは良いシャーマン、感応者。これは悪の黒魔女。古い家のなかで、鬼と悪魔が壮絶にたたかう。血が壮絶にながれる。なんのこっちゃ。
かなり無理していてあほらしいですが、なんせ貴志祐介なので読めます。必死になって、1日で読み切りました。たぶん、読んだ人の半分は茫然自失のまま。半分は途中でなげだしているかな。よくわからないけど、面白かったです。解説になってないなあ。
就寝前にフル充電したのに朝には40%を切って・・・と奥さんが言う。そろそろバッテリーがダメになったかな。6年近く使っているスマホ。実は自分のも奥さんと同時期に買ってるので、やはりそろそろ寿命かもしれない。駅前のドコモショップに行って次の機種を検討するか。
ところが更に翌日、経過をみてみると充電量はいっかな減っていない。なんだ大丈夫じゃないか。まだ1年や2年は持つかも。バッテリー表示システムが少しトチ狂っただけでしょ、きっと。
・・・なーんて考えていたら、その話を聞いた子供は「早く買い変えろ」と言ってるらしい。そんな5年とか6年とかとんでもない。さっさと変えなさい。自分が買ってあげるから。
ということでせっかくなので有難くうけるつもりだっんですが、数日後にたまたま帰宅した子供がオンラインショップで(※)ゴソゴソやってみると。これがなぜかスムーズにいかない。パスコードがどうとかバージョンがどうとか、ログインがなんたら。面倒なもんです。子供も忙しくて、結局時間切れ。
で、暇だけはたっぷりある私が引き継いでゆっくり購入することになりました。なるほど、調べてみるとまず奥さんのスマホのChromeのバージョンを上げる(なぜか古いままだった)、次にアカウント作ってグーグルにログインするところから。それからパスコードの設定かな。6年前には「パスコード」なんてもんはなかったなあ。DocomoのIDも少し違って「dアカウント」という言葉に変わってるみたい。実はこうした用語の変化・違いがいちばん大変なんです。どうでもいいことを勝手に変えるな!といいたい。かなり迷惑。
たぶん、解明に1週間か2週間はかかるでしょうね。もっとかな。単にお金を払って、新しい機種を買いたいだけなんですが。
※ふつうの人は店舗じゃなくオンラインショップで買うらしい。データの移行も自分でやる。これが安上がりだし、実はDocomoも推奨。トシヨリにはどんどんハードルが上がってきています。
毎日新聞出版★★★★
猟犬に追われた兎。ふつうに逃げても追いつかれます。そこで弱くて賢い兎は薄氷の張った水の上に逃げる。薄い氷は兎の体重をささえるのが精いっぱい。後を追った重い猟犬はズブッと氷を割ってしまいます。やーい、ざまーみろ。
ま、そういういう内容の小説なんでしょうね。ただ、兎の知恵が成功するかどうか。それは最後までわからない。
貴志祐介はいろんなジャンルの話を書く人です。未来SFもの(新世界より)、モテ教師による学園大量殺人もの(悪の教典)、ちょっと悲しい少年の完全犯罪もの(青の炎)などなど。
で、今回は法廷ものということになるのかな。冤罪でっち上げ捜査との戦いです。暴力刑事の取調室のあたりなんか、けっこう迫真。読んでて半分くらいで成り行きの見当がついてくるものの、それでも最後は「!!」です。そうきたか。多少書きなぐりの印象もありますが(※)、基本的には達者な作家なので楽しめます。
一気に面白く読めたので、ここは大盤振る舞い。久しぶり★★★★。さすがにちょっと甘すぎるかな・・という感もありますが、ま、いいか。
※取り調べの可視化の部分とか、ちょっと変なところもあるみたいで、後半、書き急いだのかな。
文春文庫★★★
副題は権力・カネ・女。どこかで見た書評によると「田中真紀子研究」という本を改題して文庫にしたものらしいです。編集部との対談形式。
当時は田中真紀子が外務大臣をやめたすぐ後くらいだったのかな。編集部は真紀子人気で売ろうとした(多分)。しかし立花は真紀子を買っていない。政治家ではない「お嬢さん」と見ている。なので本の中身の7~8割は田中角栄についてです。
出回っている一山いくらの角栄本とは取材量が違いますね。膨大緻密。要するに角栄というのは巨大というか、ケタ違いというか。悪にしろ善にしろ行動力、とにかくすごい。単に「金権政治」の始祖なんてもんじゃなく(※)、いわばその完成形ですね。跳びかっている札束にしたって、世間の想像の何十倍。総裁選なんかだと10億とか20億とかのレベル。
角栄の力の源泉は官僚支配です。支配というより官僚たちの強い支持。官僚たちにとって理想の親分だった。力を貸してくれ。知恵を出してくれ。オレが実行する。責任はオレがとる。
たぶん、最初から金を手にしようとは思っていなかった。あくまで目的は理想の実現。しかし過程でなぜか金が飛び込んでくる。気前よく使う。思い切って使う。それでも多少は手元に残る。ありがたくいただく。ま。たいして用心もしない。そんな感じだったんでしょうか。
まったく知識なかったんですが、佐藤昭という人、ようやくイメージができました。同志にして愛人、有能な片腕。また周囲の秘書たちの忠誠も理解できました。角栄。すごい魅力・求心力をもった男がいたんだなあ(※)。日本中をひっかきまわして、決定的な方向をつけて、大騒ぎして消えた。
立花隆という人、角栄を好きだったのか嫌いだったのか。うーん。すごく嫌いだったけど、魅力を否定できない。そんなところかな。
※自民の金権腐敗ルーツははるかに以前からあって、戦後なら岸からかな。ただそれを露骨かつ何十倍にもしたのが角栄。いまの自民の腐敗の流れをつくったのは間違いなく角栄。
※真紀子は角栄のDNAを引き継いではいたものの、官僚たちの心をつかむ力はなかった。真紀子にとって他人は「家族」「使用人」「敵」の三種類しかなかったという。だから尽くしている秘書たちもみんな単なる使用人でしかない。なるほど。
青土社★★★
図書館で手に取ってぱらっと開いたら、妙に印象的できれいなセックス描写が目に飛び込んできて、こりゃ刺激的な。借り出さなけりゃ。
あとで該当部分は岡本敏子の「奇跡」の一節と知りました(※)。岡本敏子はあの岡本太郎の「養女」。形は養女だけど実質的には妻というか。なぜ養女なのかは不明だけど、太郎が結婚というものを嫌った(※)。あるいは死後の相続を考えた。子供(養女)なら全額相続できます。
それはともかく。本のテーマは「性と食」です。怪物・・は2024年の刊ですが、実は2017年にも「性食考」というのを岩波書店(!)から出しています。かかえているテーマなんでしょうね。ちなみに著者は民俗学者。知りませんでしたが、けっこう知られた人らしい。東北学とか。深い興味と広範な知識。
で。中身はさまざまな本に描かれたセックスと食べることの関係ですね。抜き書きもたくさんある。満載。サヴァランの美味礼讃からサルトル、ナウシカ、手塚治。食べられて身もだえする野菜からオスをバリバリたべるカマキリの性交まで。「食べちゃいたいほど、可愛い」
特になかで紹介された小野美由紀の「ピュア」、筒井ともみの「食べる女 決定版」、面白そうなので、機会があったら読んでみようと思っています。
※太郎を思わせるような才能ある男と、自分を重ねたような女の話。かなり高齢になってからの著作らしい。
※母・岡本かの子のことは読んだこともないし知りませんが、一平との関係がいろいろややこしかったみたいですね。たぶんそれで太郎は「結婚」を嫌いになった、たぶん。