「ローマ人の物語 XI」 塩野七海

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新潮社 ★★★


rome11.jpg副題は「終わりの始まり」。生真面目なマルクス・アウレリウス帝とその不出来な後継者コモドウスのお話。コモドウス暗殺の混乱から、正統性なき実力派(?)皇帝たちの覇権時代が始まる。

だいぶ以前に書いたモッタネッリの通俗ローマ史で「毎朝トレーニング代わりにライオンを一頭殺さないと体調が悪かったマッチョ皇帝」とバカにされていたのが、多分このコモドウスだろうな。ライオン代が大変だっただろうと真面目に心配して損をした。それとも塩野さんが書かなかっただけで、本当は毎日ライオンとレスリングしてたんだろうか。

アウレリウスという人物、哲人皇帝といわれていたことだけは知っていたが、詳細は本書でようやく理解。ま、当然でしょうな。たいしたエピソードもなし、面白みもないし、もちろん著書を私が読むわけもない。「瞑想録」だったかな。読んだ人なんて、いる?

ローマの混乱は、実は評判のいいアウレリウス時代に萌芽があった、という塩野さんの説は納得。ついでに言うなら、評判の悪いコモドウスの時代、良い事もしなかった代わり特に悪いこともしなかったため、実はローマは長期の平和を享受していたというのも納得。ただ単にレスリングと格闘という個人の趣味に忠実であった愛すべき人物だったらしい。

塩野さんがやたらと映画グラディエータ―のことを書いているのが少しおかしい。わざわざビデオ買ったというから、時代考証デタラメな娯楽大作にイライラしながら、けっこう何回も何回も見たんだろうな。

追記:
モンタネッリの「ローマの歴史(藤沢道郎訳・中央公論社)」における、コモドウスが休戦してローマ帰還のくだり、およびカラカラの性格のくだりを引用しときます。私の記憶ではごっちゃになっていた。

「コンモドウスは臆病ではなかったが、競技場での争闘だけを好んでいたのだ。毎朝、飯の前に飼っている虎を一頭殺すのが習慣だったのに、ゲルマニアには虎が棲息しないので、早くローマに帰りたかったのだ」

「カラカラは暗愚ではなかった。ただモラルが全然なかっただけである。毎朝起き抜けに熊と格闘して筋骨を鍛え、食卓には客の代わりに虎を座らせ、眠る時はライオンの脚の間だった」