鏡の中の自分

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晴れ

タバコを家で吸うときは、キッチンの換気扇の下、あるいはベランダと迫害されている。でも換気扇の下は寂しいので、家族との会話に加わろうとしてちょっと真下から離れると、娘にめざとく「シッシッ」と追い払われる。臭いの粒子がすぐ漂ってくるのだそうだ。ま、仕方ない。

で、タバコを吸いながら、暇なもので食器棚などを眺める。薄暗い棚のガラスに自分の顔が映っている。照明の加減で、かなり悪相に見える。それにしても、こんなに人相悪いかなー。

気がついた。ガラス戸に映った顔のぼやりした額の部分、生え際から眉間にかけて黒い筋がある。まるで煤で線を引いたようだ。髪が一筋下りているようでもあり、深く太い皺のようでもある。これが人相を悪くしているらしい。

しかし指で触れてみても、そんな皺は感じられない。しかし現実にあることは間違いないようで、顔を左右に振ると、映った自分の額の皺も左右に動く。気になって、明るい洗面所で確かめてみた。

あった。本当に微かだが、斜めに皺のようなものがある。普通に顔を見ても気がつかないほどの、微かな皺があった。ほんの少しの皺、皮膚の凹み。でも、薄暗いところではこの陰影が大きく強調されて、凶悪な顔になる。

文学的に言えば、カインの印。あるいは内面の暗さの表出。なんか自分自身の内側を覗いてしまったようで、ちょっとうろたえた。

この話は、まだ誰にもしていない。多分、しないだろうな。