寒い!

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晴れ

一転して冷え込み。北風が吹き抜ける。ここ数日で緩んでしまった体が一気に引き締まる。駅までの短い道のり、手袋なしの手がかじかむ。

寒い季節になると、都心の駅周辺に立っている着膨れたサンドイッチマンたちの顔が霜焼けのように赤黒くなる。私の通っている新橋駅の周辺でも、寒風の中、たいてい3~4人は立っている。比較的若いのもいるし、年配もいる。元気なのもいるし、無気力を絵にかいたような老人もいる。

何週間か前、帰社の雑踏の中、そんなサンドイッチ・オヤジたちの横を急ぎ足ですり抜け、駅前の狭い道路を渡ろうとしたとき、背中で何か声が聞こえたような気がした。酔っぱらいが喚いてるな・・と思った。

昨日、同じようにまた年配オヤジの横をすり抜け、駅前の混雑した狭い道路を一団となって横切っていったとき、また聞こえた。「アカシンゴー デスヨーー」と。

今渡っている道路は、いかに狭くても道路なのだから、たぶん、どこかに信号もあるのだろう。時折、雑踏に邪魔されて通ろうとして通れないクルマが、人の群れの中で立ち往生していることもある。「ケッ、こんな混雑した駅前にクルマで突っ込むなよ!」と私達は運転席のイライラ顔に向かって舌打ちして通り過ぎる。

長い時間、じーっと同じ場所で見ているサンドイッチマンにとって、こうした風景はえらく理不尽に思えたに違いない。集団のパワーにまかせて、帰宅を急ぐサラリーマンたちが次から次へと赤信号の道路を無視して押し渡っていく。危険でもある。不幸にも巻き込まれたクルマが難渋もしている。

あのサンドイッチマンは1日何回くらいサラリーマンたちの背に向かって「アカシンゴー デスヨー!」と叫ぶのだろうか。それともほんのときたま、数日に1回、抑えきれずに叫ぶのだろうか。10分か15分くらい立ち止まって、それを確かめてみたい誘惑にかられる。ふと誘惑にかられながら、もちろん私は足を緩めることなく雑踏の中を改札へと流れていく。