この本が、我が家の村上春樹の最初でした。もちろんノルウェーの森かなんかで売れている作家とは知ってしましたが、実際に読んだのはこれが初めて。
で、私が偶然買って好きになって、奥さんもこれにハマって、子供は完全にほれ込んで、けっこうな冊数のハルキ本を今では揃えています。ただ私の方は、これまで読んだ村上春樹の小説は3~4冊程度。悪くはないけど、ちょっと違和感があるような感じで、実は敬遠しています。
というわけで小説は敬遠ですが、この「遠い太鼓」はいい。ハルキとそのオクサンのイタリア、ギリシャ放浪記。放浪というと語弊があるかな。要するに数カ月のタームで家を借りて、亭主は本を書いたり翻訳したり朝食を作ったり走ったり。オクサンは本を読んだり、昼食を作ったり、一緒に買い出しに出かけたり、夕食を食べに出かけたり、ケンカしたり。
遠い太鼓の音が聞こえてくると、人は旅への衝動に駆られるということです。異邦での静かなニッポン人夫婦の坦々とした生活風景ですが、その基調には低音の太鼓の音がかすかにかすかに響いているんでしょうね。この絶えず聞こえる不吉な基調音のようなものが、たぶん村上春樹ワールドの魅力なんだと思います。