ハイペリオン/エンディミオン・シリーズのダン・シモンズなのでちょっと期待。しかしまぁ何というか・・・読み切ったのがエライ、と自分を褒めてあげたい。
内容は有能かつ富裕かつ孤独な保険事故調査員が数々の事故の謎をたちどころに解明し、後半はベトナム戦時代の経験を生かして巨悪と派手にドンパチ(もらろん愛する女性救出なども絡む)。かなりひどい本です。
唯一興味を持てたのは狙撃手、スナイパーという仕事です。大昔、たしか石原慎太郎の小説で1000~2000メートルの距離(しかもビルの谷間)から遠隔殺人するというストーリーがあって、びっくりしたことがありました。ゴルゴ13は決して虚構とは言い切れないんだ!
狙撃兵は、はるかかなたから相手の目を見て殺すのが特徴です。単なる「敵戦車」とか「敵兵」などという象徴的な事物ではない。明確に一人の人間を殺す。これから殺すべき相手の顔が見える。表情もわかる。死の瞬間の驚愕をみることだってできる。戦争ではあるけど、感覚として「殺人」にいちばん近い殺し方ですね。
故に、スナイパーは敵につかまると、まず助からないという話を読んだこともあります。憎悪の対象。まずなぶり殺しになってしまう。
今回の本でも「狙撃兵がまず真っ先に殺すのは、敵の狙撃兵」という一文がありました。そりゃそうだろうな。要するに自分にとっていちばん危険な相手から殺す。狙撃兵を撃ち、砲手を撃ち、それから指揮官を撃つ。
ということとは別に、ちょっと魅力のある仕事(?)ではあるでしょうね。要害の場所に陣取って、武器弾薬がたっぷりあれば敵の小隊くらいは撃滅可能。誰かの小説(※)に「たった二人でロシア軍兵士を50~60名、戦車数台、車両10数台破壊して生還した」というドイツ軍狙撃兵のストーリーがありました(数字はかなりいいかげんです)。たしかヒトラーに激賞されて、国家英雄になってしまう。そういう面白さがあります。成功版アラモ砦みたいなもんですか。
※ 補遺
スティーヴン・ハンターの「魔弾」かな。