飛騨高山の近くらしい合掌造りの家。ただし住人たちは歯の抜けるように次から次へと里へ逃げ出し、いまでは母と男の子の二人だけが昔ながらの暮らしを続けている。
その雲の上の世界へ下界から時折迷い込んでくる旅人たちが、一杯の白湯をご馳走になり、トチ餅をつまみながら話をしてくれます。一応は関連が付けられたオムニバスで「侍の妻」「毒消し売り」「盆嬶」「無限寺」「天鏡峠」「餅のなる樹」の計6編。
こういう土俗的な雰囲気ってのは、坂東眞砂子の真骨頂ですね。とくに女がいい。私は15歳で3日限りの夫婦生活を送る「盆嬶」が面白かったです。全体に、妖気や怪奇は比較的少ない一冊です。(もちろん、多少はあるけど)