フォーサイスには珍しい短編集で、含まれているのは「戦士たちの挽歌」「競売者のゲーム」「奇跡の値段」「囮たちの掟」「時をこえる風」。
やっぱり、短編はあんまり上手じゃないね。気が利いてはいるんだけど、どうも無理なところがある。それとも訳がいけないのかも知れないな。肝心な部分がいまいち明快に分からない。
最後の「時をこえる風」はカスター将軍に従軍したスカウトとシャイアンの娘の恋物語で、けっこういい味なんだけど、いちばん最後の数ページぐらいが腑に落ちない。たとえば極寒の山の洞窟で二人が初めて愛をかわしたらしいんだけど、そのときに娘の悲鳴が聞こえてくる。この悲鳴が何を意味しているのか。歓喜ではない・・という趣旨のことが書いてある。では何で悲鳴を上げたのか。悲しみ? 驚愕? それなら山の下にいた敵役が「憎々しげに」になる理由がないし・・・。
それとは別に、フォーサイスという人。確かに女性や濡れ場を書くのも得意じゃないのは確かです。