著者は例のナントカ和(やまと)ちゃんと結婚した、元将棋世界(多分)編集長です。編集者をやめてから、確か賞をもらったはずですね。村山聖を書いた本だったかな。
「将棋の子」というタイトル、なんだか大地の仔みたいでイヤな題だなーと感じたのですが、中身は、ま、それなり。簡単にいうと奨励会挫折の少年(たち)の人生を描いたものです。天才少年として地方から上京し、天才集団・奨励会では平凡な能力でしかないことを知って打ちのめされ、また希望を抱き、また叩きつぶされ、そしていつのまにか退会年齢が迫ってくる。きつい競争社会です。
叙述はちょっと思い入れが強すぎるかな。一昔前に流行した新進ドキュメンタリーライターのサンプルみたいな雰囲気です。一枚のハガキをきっかけに、将棋雑誌編集者が夜行に乗って(ビール飲みながら)札幌へ行き、古紙回収の仕事でかつかつ食っている奨励会挫折の青年に会い、深い理由もないけど、なぜか青年が恋を知った町・北見まで足を運びたくなり・・・・。書き手の「私」がハードボイルドふうトレンチコートでも羽織っているとピッタリ。
ま、悪くはない本です。ただ、私にはちょっと。感傷的すぎた。