「戦中派不戦日記」の続編になるのだろうか。
この日記での医学生風太郎は暗く憤っています。マッカーサーも戦後民主主義も、共産党も日本人も、誰も信用していません。とくに付和雷同の軽薄民衆にたいする絶望感は深い。
混み合う列車の中での罵り合い。デッキにしがみついた男が「こっちは寒風にさらされてるのに、中に座っている奴が眠れないから静かにしろってのは、民主主義じゃないだろ!」とわめく。ちょっと以前はこんなとき「鬼畜米英主義だろ!」と言ったものだ、と風太郎青年は喝破します。
神と崇められた特攻隊員も、戦後は社会不適不良の代名詞「トッコー上がり」と変化します。「へんなものね」と若い女たちもコロコロ笑っています。何が変わったわけでもない。ただ戦争に負けただけのことですが。
この日記の刊行がかなり晩年まで著者に許可してもらえなかったというのも納得できる気がします。それにしても風太郎青年、折りにふれて「復讐」と呟くのは何なんだろう。