「犬は勘定に入れません」 コニー・ウィリス

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早川書房 ★★★


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副題は「あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」。原文タイトルは「TO SAY NOTHING OF THE DOG or How We Found The Bishop's Bird Stump At Last」

判じ物みたいな題だが、どうもジェローム.J.ジェロームという人の「ボートの三人男」(邦訳もある模様) からとったものらしい。呑気な三人の紳士が犬をつれてテムズ川下り。一種のテムズ観光案内のような内容とか。

それはともかく。

Bird Stumpってのが何なのか。それがややこしいです。ページの最初の方では「鳥株」という訳で出てくる。そりゃ直訳すれば鳥の株だろうけど、それって言葉になっている?・・と混乱しながら我慢して読み進むうちに、だんだん見えてくる仕掛けになっています。数十ページ読んで投げ出さないように。ま、コニー・ウィリスの読者なら、こうした我慢は承知の上でしょうね。すべてが伏線、入念な仕掛けになっている。

なんといいますか、「ドゥームズデイ・ブック」の姉妹編ですね。例のダンワージー先生も登場します。秘書役のフィンチも(今回は妙に有能)出番があります。で、ネッド君が苛められながら21世紀と20世紀と19世紀をうろうろ彷徨したり活躍したり、推理したり走ったり。珍しく恋までもするようです。

ただ、書評なんかで言われているよりは犬、猫のキャラは立っていません。魅力がないわけではないけど、でも平凡。どうしても犬猫を舞台まわしに使う必然性も特にはなかった気がします。この点は少し残念でした。

ま、何であれかんであれ、「ドゥームズデイ・ブック」の陰の対して陽。「ドゥームズデイ・ブック」の涙に対しては笑い。悲惨でもなく、悲劇的でもなく、くすりと笑える好品。いわばコミック仕立てのアガサ・クリスティ。お勧めの一冊です。ただし、2940円(税込)は高すぎる! 高すぎるぞ!