周平づいてしまって、棚の中にあった「三屋清左衛門残日録」を再読。もちろん悪くはないけど、でもそんなに大傑作なのかなー。なかなかの一冊ではありますが、私の個人評価ではせいぜい三つ星。
ついでに文春の全集を借り出して「よろずや平四郎活人剣」。このテの浪人もの、長屋ものを読むのは初めてです。なんとなく昔の山手樹一郎のような印象を持っていました。
で、平四郎ですが、水野忠邦の天保が時代ですね。一味違っていて、主人公はちょっとグレかかった旗本の庶子です。性格も深刻ではなく、時代が下っているせいか軽い。明るい。金銭感覚もしっかりしています。長屋住まいをしながら「もめごと解決」で小銭を稼いでいる。
なんだかんだ言いながら、最後まで読んだんだから、ま、いい本なんでしょう。ただ後半まで行く頃になると、また例のパターンか・・と飽きてくることも事実です。怪物鳥居は暗躍するし、登場するヤクザ者はみんなドスを呑んでいるし、性格の悪そうな侍はすぐ切りかかってくるし、しかも平四郎は主人公ですからえらく強くて、バッタバッタと峰打ちでやっつける。
多分、藤沢さんはけっこう楽しみながらこの連載を続けたんだろーな、という印象です。こういうストーリーも書かないと精神衛生上のバランスがとれない。どれもこれも一茶みたいな本だったら、やりきれません。
ま、悪くはありませんでした。上出来の講談本です。
蛇足
平四郎が稼ぐ手間賃ですが、捜し物程度だと200文~400文程度。ちょっと大きな仕事では1両とか5両。文と両の関係がよくわからないのでサイトで調べてみました。寛永の頃の公定価格で、1両=1000文。おおざっぱに言って1両は10万円くらいだそうですから、200文で2万円ですか。煮豆屋の娘さんから謝礼で取るにしては、けっこうな額です。
蛇足
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1両=6000文(銭6貫)といううデータもありました。幕末あたりは銭相場が下落して1万文にもなったとも。こういうとこが難しい。1両の価値もかなり下がっていたようです。