映画のノベラゼーションなのか、それとも原作なのかは不明。いずれにしても進行を波瀾万丈にするため時系列はけっこう無茶しているし、諜報担当ウォルシンガムがハリウッドのスーパーマンのような働きで困難を次々と解決していく。
という真っ当な話を別にすると、それなりに面白い一冊だった。
実際のエリザベスというのは、どんな人物だったんだろう。超ケチ、優柔不断、戦争恐怖症、足して二で割り何もしない、石橋叩いて渡らない・・・。でも結果的に辺境の島国イングランドを一流国に育て上げたのは彼女、あるいは、彼女の時代だ。
ひどい連想だけど、東京12チャンネル。日テレ、フジ、TBS、テレ朝などと比べると、いかんせん力はない。予算もない。平均すると番組の質も低い。でも低予算の中で工夫をこらして思いもよらない番組を作って当てる。一流キー局には決して作れないコンテンツをひねり出す。我が家ではNHKの次によく見るのが12チャンネルです。よくまぁあれだけB級タレントを使って、いいかげんな(でもけっこう面白い)番組を作る。好きな局です。
まっとうな国家が海賊働きを奨励して、しかも上前をはねる(この小説の中では確か75パーセント納入させる)なんて、普通は考えつかないですね。でもそういう政策の結果、たとえばフランシス・ドレイクがサーの称号を得、無敵艦隊撃破の立役者になる。
もう一つ、この小説で思ったのは大貴族という連中の位置づけでした。たとえばノーフォーク公という人は絶大な権力を握っていて、場合によっては女王の寝室へズカズカ侵入してきて、文句をたれている。女王側ではなんとか彼の力を削ごうとするけど、でも簡単にはいかない。
たとえば江戸時代の尾張とか紀州のようなもんなんでしょうか。でも、もっと実力がありそうな雰囲気です。淀の方に対する家康のような関係かなのかな。
論より証拠。年表を調べると、この小説に登場するノーフォーク公は4代目のトマス・ハワードのようです。1572年に処刑されてますね。となるとエリザベス戴冠が1558年ですから、エリザベスは1533年生まれの25歳。で、ノーフォーク公は1537年生まれですからまだ21歳の青年じゃないですか。こんなに偉そうにできるわけがない。ちなみに4代ノーフォーク公とアン・ブーリン(エリザベスの母)は、たぶん従兄弟です。
なんか、雰囲気が違ってきますね。もっともウォルシンガムやセシルなんかも実際にははるかに若かったようです。