人気らしい「燃えよ剣」なんかと比べると、はるかに好きです。
なんといいますか、取り上げた連中にみんな味がある。女のため、出世のため、あるいは意地のため、あるいは成り行きで。必死に頑張って、たいていは破滅する。
この中で名前は忘れましたが薩摩からもぐりこんだ男のエピソート、興味を持てました。冴えなくて、頭悪そうで、でも示現流の達人で、虫歯の兆候があるとすぐ釘抜きで無理やり抜いてしまうんで歯が一本もない。変な男です。こういう男が新撰組に間諜として入る。
ま、いろいろあるんですが、生命力がすごい。戊辰戦役で官軍に捕まっても最後の最後まで脱走をはかる。逃げきれないと知っても逃げる。往生際が悪いのなんの、思い切って抵抗する。もちろん惨殺されます。で、殺したほうが一種の感動を覚えてしまうほどの野獣ぶりです。他におさめられた挿話の主人公はみんな従容として切腹したり斬首されたりするんですが、この人だけは別格。
調べてみたら富山弥兵衛という名前でした。