「殿様と私」 榊原喜佐子

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草思社 ★

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徳川慶喜の孫として育ち榊原家(越後高田藩)に嫁いだ女性の暮らしと生き方。戦争、敗戦、華族解体。それなりに強くたくましく生きていく。

ただ、前作「徳川慶喜家の子ども部屋」に比べるとだいぶ落ちます。内容が個人的すぎるからでしょうか。どうしてもナントカオバサン半生記みたいなふうになってしまう。「徳川慶喜家」の方はなんといっても十五代将軍の後半生そのものに価値がありますからね。老いた慶喜が運動のため革張り廊下を毎日スタスタ往復していたというだけのエピソードでも、重みがある。 

チョロッとですが太宰の「斜陽」についても触れています。「この作家はほんとうの華族はどういうものか、まったくご存じない。おそらく華族に一度もお会いになったことがないだろう」と疑問を呈しています。そりゃそうでしょ。華族ったって下々が思うほど特殊な人種というわけではなく、それなりに逞しかったり強かったり。霞を食べて暮らしているわけじゃないんですから。

そうそう、和服をいう場合、自分たちは「お召し」という言葉を使った。使える下々の者たちは「着物」と言った。だから最近よく聞く「お着物」という言い方がどうも奇妙な感じがして・・という部分、けっこう面白かったです。なるほど。よくテレビなんかで耳にする「今日の妃殿下は藤色の御着物で・・」なんていう表現、違和感を感じるんでしょうね。