集英社 ★★
分厚い一冊。著者名に馴染みがなく、ゲテものかな(でも集英社だし)と心配しながら借り出したが、収穫だった。
時代は源平です。源為義が熊野の別当の娘に生ませた娘、鶴(たず)を織物の縦糸として、熊野三山の歴史というか民俗をあやしく描き出しています。なんせこの鶴、為義の娘ということは義朝の妹、八郎為朝にとっては慕う姉、頼朝や義経には信頼の叔母。ここに後白河や清盛、弁慶、新宮十郎行家 熊野の湛増、河野三郎(ではなく熊野水軍の鈴木三郎らしい)、巫女やら鬼やら天狗やら。
ただ、そんなにおどろおどろしい内容ではありません。本宮、那智、新宮の絡み、当時の京と熊野の関係などなど、へーっという部分もたくさんあります。熊野のあたりのことって、なんにも知らなかったもんですから。
「丹鶴姫伝説」ってのは、実際にあるらしいですね。山深い熊野。高貴な血筋の怪しい巫女。何十年たっても美貌が衰えない八百比丘尼みたいな存在。雰囲気があります。
紀和鏡という人、中上健次の奥さんらしいです。