マガジンハウス ★★
「蛇鏡」によく似た構成ですね。
四国は「死国」である。右回りの正統お遍路に対して、死んだ人の年の数だけ左回りに回ると死者が帰ってくる。何やかにやで四国の中心の村には死者がつぎつぎと蘇ってきて・・・。ま、そういうようなストーリーです。
私、板東眞砂子は好きですが、ホラーそのものはあまり興味がない。ですからストーリーなんかはどうでもよくて、むしろ文体とか人間描写のほうが面白い。この本でも東京へ出ていたっ女がちょっと出戻りして、野暮ったかった少女が都会的に変貌していて、あいかわらずの村の同級生なんかと親しんだり疎外感を感じたり。そういう都会vs田舎、現代vs過去みたいな構図が好きです。土俗描写にかけてはこの作者、名人ですから。
あんまり説明になってないなー。それでもけっこういい本だったと思います。ちなみに私の場合、この人の代表作は「山妣(やまはは)」と「善魂宿」。とくに山妣は雪深い山奥を舞台にしたドロドロの因果もので、まるで圓朝の「真景累ケ淵」ですね。蛇足ですが洋もの(旅涯ての地などイタリアもの)は閉口で、読了したことはありません。