「江戸打入り」 半村良

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

集英社 ★★★

 

edouchiiri.jpg半村良なんて何年ぶり。少なくとも15年や20年は読んでいない。昔は大流行作家でしたが。

で、一読。さすがに達者、うまい人です。時代は秀吉の北条征伐から家康の江戸入りのあたり。三河の没落しかかった武家(豪族)のたった一人残った末弟・名前が鈴木金七郎ってんですから、上に6人はいた。で、父親ふくめて男はみーんな討ち死にしてしまって自分以外はすべて女家族、という設定。

その金七郎が仕方なく松平家忠(家康の分家筋)に人足奉公して、なぜかそれなりに取り立てられて、なぜか未開の江戸まで行くはめになった。彼らがしゃべってるのは三河弁、周囲にも英雄豪傑なんていません。ふつうの百姓、足軽、従軍坊主。庶民の感覚で歴史上の大事件を描いたらこうなる、というストーリーです。

庶民ですからね、自分たちがなぜあの城へ行かされるのか、なぜ重い碇を運ばされるのか、なぜ歩かされるのか、なーんにも知りません。なーんにも知らないで、江戸へたどりついてしまった。そして彼らが、江戸っ子の先祖になってしまう。そんな将来のことも、もちろん彼らはなーんもしりません。