朝日新聞社 ★★★
意外なことに、未読だった。
ま、海音寺さんですから海音寺流の書き方。そんなに出来のいい方ではないような気もしますが、もちろんそれなりです。
伊達政宗を描くときというのは、常に鍵となるのが「美男子だったかどうか」「次男に期待する母親との関係」「父親見殺し事件」でしょうね。この本の場合は「色黒アバタ」「毒殺事件は政宗の演出=母親は冤罪」「傑物の父親。しかしあえて見殺し」と解釈しています。
要するに、実に食えない戦国大名です。悪知恵が働く。危ないな・・と思っても、つい美味しい話には手を伸ばしてしまう。それで何度も何度も危機にひんする。ライバルとなった蒲生なんて決して愚物ではなかったし用心もしていたんですが、それでも政宗のおかげでひどい目にあっています。でもこれぐらいワルのほうが、いかにも戦国の武将らしい。こういう男が晩年になって「馬上少年過ぐ・・」とか詠嘆する。