毎日新聞社 ★★

そういうお話です。ストーリーらしいストーリーがあるわけじゃありません。すべて辛抱、すべて努力の人生。目立たぬよう、後ろ指をさされないよう、しかし貧乏はしないよう、平凡といえば平凡な江戸町人の一生です。小説といえるかどうか、ちょっと疑問でもあります。
たぶん、半村さんはこういう坦々としたものを書きたかったんでしょうね。人生、ドラマなんてそうあるものじゃない。あるいは言葉を変えると、どんな庶民だって毎日が小さなドラマの連続でもあり、とりたてて大騒ぎするような出来事なんてあるもんじゃない。
半村良、何歳になったんだろう。勝手な解釈ですが、老境というものなのかもしれない。ストーリーと人間ドラマ作りの名手が、ストーリーに飽きた。派手なドラマを書きたくなくなった。
大川の水が流れるような、起伏のない上下巻です。