白い素足

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薄日

夜、素足でベランダに出て、小さなポータブルチェアに腰を下ろす。左手には手製の古びた子供椅子が置いてあり、汚れた座面に灰皿が置いてある。前面はベランダの手すり。ステンレスの手すりの向こうに木々の梢が黒く見える。ささやかなスペースだが、一応は私だけの場所だ。

夜だから背後のリビングのカーテンは引いてあり、ベランダは暗い。半分引かれたカーテン越しの明るい部屋では妻がなにやら家事をしていたり、本を読んでいたり、テレビを観ていたりするのが見える。比べて対照的な暗さの広がりが、あんがい心地よい。

で、足を組んで一服していると、パジャマの裾から見える足がほの白い。パジャマが黒っぽいから、実際以上に足が白く浮かび上がる。本当は白くなんかなく赤汚い足なのだが、こういうときは風呂上がりのように清潔に見える。うら若い女の人の素足のようにも見える。

なんとはなく、自分のものではないような足を眺めながら、タバコを燻らす。時々、足をピクピッと動かして、自分のコントロール下にある自分のものであることを確認してみたりもする。

とりたてて言うほどのことでもない。ただ、この素足のことをいつか書いておこうと思っていた。それで今日、思い出して記しました。