「死都日本」石黒 耀

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講談社 ★★

 

shitonihon.jpgこの人の本は初めて。火山大規模災害小説です。「日本沈没」と少し雰囲気が似ています。噴火するのは霧島。

実際には霧島だけでなく、阿蘇カルデラに匹敵する巨大な旧火口が一気に目覚めて大噴火を起こす。正確かどうか知りませんが、たとえば富士山がいっぺんに吹っ飛ぶような規模なのかな。

そんな大噴火が5年後に起きるか10年後に起きるか、それはわかりません。でも多分5000年とか1万年とかのタームで考えれば、起きても不思議ではない。いつかは崩壊する地盤の上に我々は暮らしているわけです。で、もしそんな噴火が発生したとき、九州はどうなり、日本はどうなり、世界はどうなるか。

爽快なくらい悲惨です。宮崎も鹿児島もあっというまに火砕流(あるいはそれに伴うジェット粉塵)で壊滅する。個人がどうこうできるレベルじゃありません。あっという間にまっ平らになる。火山灰は西日本を覆います。作物は全滅。そこに雨が降ると川筋や平野部も全滅(そもそも平野を作ったのは川ですから)。関東平野も悲惨な状況に陥ります。生き残るのは高地・山地、それに沖縄と北海道くらい。日本だけでなく北半球の各地は数年間の冷たい夏、暗い夏となるでしょう。作物は不作となり、餓死者が続出します。

というふうに、なかなかの迫力です。せいぜい半径10~20km程度の規模の噴火で、こんなに影響が出てしまう。

ニーヴン&パーネルの「悪魔のハンマー」、手法や描き方はまったく異なりますが、ちょっと思い出しました。こっちの場合は直径数km程度(たぶん)の彗星がバラバラになって地球に衝突する。たったこれだけのことで地球の文明はほぼ消滅してしまう。

どっちも決して絵空事ではなく、充分可能性のあるシナリオだというのがミソ。地表の生き物にとっては大問題ですが、でもそのうちまた復活して繁殖する。時々は主役交代になったりしますが。そして繁栄を謳歌しているとまた忘れたころにドガーンと来る。母なるガイアってのはしぶといです。