ハヤカワ文庫 ★★★
ジョージ.R.R.マーティンのスペースオペラもので、やけに評判がいい。つい騙されて1巻、2巻を買ってしまった。
なるほど。巻1の「禍つ星」。デブで無毛で人嫌いで菜食主義社で猫好きの大男、宇宙商人ハヴィランド・タフがいかにして失われたテクノロジー満載の巨大胚種船を手にいれ、華麗なる環境エンジニアに転身したか。そして訪れる星々でいかなる冒険をするか・・・。
悪くはないけど、でもこの主人公、そんなに魅力的なキャラなのかなー。ま、デフ、ハゲといった通常のマイナス要因を寄せ集めて面白い人物を創造した点では、さすがR.R.マーティン。当然のことながら文章もそれなりに凝っているし味もある。
続編の「タフの方舟2 天の果実」になるとタフの性格が更に曖昧になる。こすっからさが前面に出てくるわりには惚けた雰囲気がなくなってきて、可愛げがなくなる。だんだん偉そうになってくる。
などなど、決して大傑作ではないと思うけど、でも佳品でしょうね。船首から船尾まで30キロ(だったかな)の巨大な船に、数匹の猫だけを友に暮らすという設定。同じようなケースではダン・シモンズの「ハイぺリオン」ですか、領事と称される人物が船内格納の人口知能だけを相手に孤独に暮らすというあたりと少し似た匂いもありますね。
脱線ですが、ダン・シモンズの場合は、この孤独な領事にスタインウェイかなんかをガンガン弾かせるといふうな臭い悪趣味があって、これは閉口でした。他にもいろいろあったなー。博物館ものの拳銃が好きとか、ライトの建築にこだわるとか、ジョン・キーツがどうとか。変な人です、シモンズというのは。
ま、関係ないシモンズの悪口(でもハイぺリオン・シリーズは傑作)はともかく。このR.R.マーティンの2冊は買って損するものではありませんでした。再読もたぶん、可能でしょう。
(意図したわけではないけど、これで3冊、猫がらみが並んでしまった)