日本放送出版協会 ★★★
何気なく借り出したのに、あんがい面白かった本。
子供の頃、たまたま家にあった巨大なダンボール箱の中によく入ってみたことがあります。なんか、気に入ってしまった。たしか思いついて、窮屈な箱の中でこっそり昼寝をしたこともあった(もちろん夏です)。
自分でも理由がわからなかったですね。偏愛。「変なことをしているな・・」とは思っていたけど。
この本の著者(実際には口述かな)は自閉症患者であり、動物学者(なのか?)であり、動物に苦しみを与えず食肉処理するシステムの考案者であり、よく知らないがかなり活躍している人。「動物感覚」の原題は「Animals in Translation」だそうです。
で、グランディンによると「体に適度な圧迫を加えると心地よく感じる」のだとか。グランディン自身も特製の締めつけ機を作って、不安定な思春期をこの器具でしのいだという。不安におそわれると、締めつけ機で体を挟んで寝るというわけ。(処理場に向かう牛も適度に体を締めつけてやると安心してスムーズに歩く)
たしかにね。ただ単に横になるのではなく、たとえばクッションを体に乗せることで、なぜかリラックスする気がします。重みのある掛け布団の効用(たしかに気持ちよい)もここにあったのか。
ウェブで見る「猫鍋」。猫が鍋の中に好んで入りたがる。猫の背中の丸みが鍋の湾曲にあっているからだともいいますが、むしろこの「気持ちよい圧迫」理屈のほうが合っているような感じです。
本人によると「自閉症患者は動物の心がわかやすい」という。ある意味、健常な人間と動物との中間に位置していることが多いという持論のようで、だから食肉処理施設で問題が発生すると著者のテンプル・グランディンは駆けつけて、動物の気持ちになってトラブルを処理しようとする。動物と人間の通訳。
時には四つんばいになり、豚と同じ目の位置で周囲を見る。立っている人間には見えないものが、豚には見える。たとえばチラチラ光る一枚の小さな金属片が気になって仕方ない。食肉処理場に通じる通路が暗くて怖くて、それで豚は通路を通ることを拒否する。拒否する豚に無理強いすると、ストレスにあふれた豚の肉の品質は下落する。
意外や意外で楽しめた本でした。