「ゾウの耳はなぜ大きい?」クリス レイヴァーズ

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★★ 早川書房

 副題は「代謝エンジン」で読み解く生命の秩序と多様性。

zounonini.jpgま、だいたい想像できるような内容です。体の小さな生物ほど必死にエネルギーを生産しなければならない。つまり「代謝エンジン」の比重が大きくなる。しかしエンジン性能も限界があるので、たとえば体長1センチの哺乳類は存在しない。

ようするに成長戦略として、図体が大きくなることは有利なみたいですね。ただしこれにも限界があって、キングコングのサイズになると体のほとんどが骨格で占められ、巨体を支えるために足は果てしなく太くなる。だからキングコングはビルに登ることは不可能。極限はピラミッド型の動物ということになりそうです。

ま、そこそこ面白い本でした。

もう一つ。「幻の終戦―もしミッドウェー海戦で戦争をやめていたら」(保阪正康)も一応は読了。ミッドウェーの後で近衛や吉田茂が中心になって和平工作を押し進めていたら日本はどうなっただろうか・・・という「IF」のお話。

あの近衛が人格一変してスーパーマンになることがありえたんだろうか。東条がそんなに簡単に辞任に追い込まれただろうか。当時の軍部は政変(和平内閣の誕生)を許すほどそんなに脇が甘かっただろうか。

ちょっとキャクラターの描き方に肉付けが足りない感じで、やはりキレイゴトのお話になってしまっている。この本読みながら大岡さんの「レイテ戦記」を併読していると、やはり空想と現実の越えられない段差のようなものを感じてしまいます。悲しいほど非合理的でわけのわからない「現実」のほうが、どうしても訴える力が大きいです。

そういいえば大昔、伊達政宗が政権をとったらというIFものを読んだことがあったような。あれも発想は面白かったけど、結果的に政宗という男が全智のスーパーヒーローになってしまった分、つまらなかったです。

カミサマになると、人間臭さがなくなってしまう。IFものはどうしても主人公がカッコウ良すぎる描き方になってしまうようです。(そういえばマーク・トウェインの「アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー」もそうでした。でもあれはマンガとしての面白さがあって、また再読してみたいです。ん? 要するにトウェインは作家として抜群に上手だったということなのかな)