★★ 文藝春秋
かなり昔に読んだことがあるものの、内容は完全に忘れてしまった。やたらミシュビチとかゲシャビシュとか舌をかみそうな名前の王様や貴族が登場したことだけは覚えてます。
で、ふと思い出して借り出し。本当は同じ著者の「ハワイ」を再読したかったんだけど、これがなかなか発見できない。ミッチェナーって、けっこう人気のある作家だったと思うんですが、あんがい見つかりません。
で、まあ何と言うべきか。歴史的なポーランドって、思ったより広大で豊かな国家だったんですね。たぶん最大版図ではバルト海・リトアニアから黒海近くまで広がっていたようです。東はウクライナ、南はたぶんスロバキアとかルーマニアとか。
たぶん、南側以外はあんまり山がない。ひたすら平野が多くて、地味も悪くない。(だから最近、ポーランドで洪水なんてニュースを見ると変な感じがしました)。潜在的に大国になる要素はあったんだけど、なんかうまくいかなかった。
なんでですかね。東側が開けすぎていたからかな。モンゴルは攻めてくる。トルコも攻めてくる。東の広大なロシアは虎視眈々と狙っているし、北からスウェーデンが押し寄せてくる。西にはやけに剛直で効率のいい(頭もいい)ドツイ騎士団がいる。山の南にはオーストリア帝国ががんばっている。
ミッチェナーの言い分では「豊かで人口の多い国なのに、政治がまったく機能していなかった」のが敗因だったようです。「黄金の自由」と称する貴族民主主義が問題で、要するに貴族たちが衆愚デモクラシーを実現して、王様の中央集権を拒否しつづけた。王様が「オレの言うことを聞け」というリーダーシップを発揮できない仕組みになっていた。もちろん市民・農民の発言権なんて問題外ですけど。
というわけで、ロシアとドイツの間で好き勝手をやられた。この2国とオーストリア・ハンガリー帝国の3つの手で、何回も分割されたり、消滅させられたり。グチャグチャです。
大昔、タラス・ブーリバ(ゴーゴリだったかな)で知ったポーランド人はやけに派手で軟弱で見栄っ張りという印象でした。コサックの野生はないし、ロシアの強欲もなし。ドイツの強さもない。たぶんいい人たちなんだろうけど、いつも意見がまとまらないで、仲間割れしては外敵に利用される。
なんか、悲しい歴史ですね。そういう悲しいお話です。
もしも隣国がドイツ、ロシア、オーストリアではなくて、多少は先進のたとえば英国、フランスなどだったらポーランドの運命はまた異なっていたかも・・・とミッチェナーは言っています。こういう隣国に恵まれていたら、ポーランド式グチャグチャ先進民主主義はなんとか機能したのかもしれない。
翻訳の工藤幸雄さんが、縦横無尽に顔を出しては講釈 注釈をたれています。あんまりミッチェナーがいいかげんに嘘ばっか書いてるんで、ポーランド専門家の工藤さんとしては黙っていられなかったらしい。訳者が本文中で何十行も「解説」を追加している、ヘンテコリンな本です。