「出発点―1979-1996」 宮崎駿

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★★★ 岩波書店

宮崎駿の対談、雑文、講演、メモなどなど。

hayao.jpgなかなか面白ろうございました。そんな人じゃないかと思った通りで、かなり激しいものを秘めている。秘めているけど映画の成功も大事だし、スタッフを食わせることも大切。どこかで折り合いをつけながら生きている。あるいは、少し妥協してる。

子供たちには三歳まではテレビを見せるな」だそうです。アニメなんぞ見るのはとんでもない。高校や中学が問題ではなくて、どうせ考えるなら幼稚園と小学校からやらないとだめ。

手塚治虫と黒沢明なんですね。圧倒もされ、超えないといけないものでもある。もののけ姫はある点では七人の侍への修正クレームでもあるような。「武器ももたず、弱くて卑屈な百姓」という構図に異論をとなえている。

「子供が成長してどうなるかといえば、ただのつまらない大人になるだけ」と言い切るのがすごい。でも、だからといって子どもが希望でないわけではない。たとえ「つまらない大人」になるにしても、希望の対象となるのは子どもたちしかいない。

そうそう。本筋とは関係ないけど「もののけ」のエボシ。「たとえばルソンあたりに売り飛ばされた娘で、現地で豪商かなんかの妾になって、最後は亭主を殺して日本に戻ってきた・・というような経歴の女かもしれない」」という趣旨のことを言うております。ははは。そんふうに考えると、登場人物、みんな趣があります。

名前忘れましたが「何者なんだろ」と思わせるあのカラカサ坊主。彼なんかも深く考えると迷路に入るんで「食べるため、仕事としてやってるんでしょ」とか。軍隊にしても下っぱ政治家にしても役人にしても、なにか深く考えて行動してるわけじゃないわな。みーんな仕事。身過ぎ世過ぎ。

追記
「千と千尋」で眼下を走る電車。どこへ行く電車なのかという問いに対して、「ふだん電車を見てそんなこと考えますか? なーんも関心ないでしょ、ふつう」と答えてます。なるほど。どこへ行く電車であっても、それがどうした。ふつうの人間の日常において、どうでもいいことです。ただ「電車が走ってるなあ」と思うだけ。