「西郷隆盛」 海音寺潮五郎

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★★★★    朝日新聞社

saigo.jpg全9巻のうち、ようやく6巻まで読了。長いです。

海音寺さん(なぜか「さん」を付ける)のものはたいてい面白いですが、この「西郷隆盛」は史伝なので、フィクション要素はゼロ。雰囲気は少し異なるものの、大佛次郎の「天皇の世紀」と同じですね。

どちらも、読むときは背筋を正さないといけない。実際には、正さないといけないなあ・・と思いながらダラけて読んでます。あっ、ダラけてと言っても、横になって読むのはさすがに無理です。内容も重量も重すぎる。せいぜい、足を組んだり椅子に寄り掛かったり、ストーブに足を乗っけたり程度が限度。

こういう立派な本の内容をあれこれ論評するのも気がひけますが、素朴な感想としては「当時の志士ってのは大変なんだなあ」ということ。京大阪から江戸やら水戸やらまで、ひたすらテクテク歩くのも大変だし、毎日々々手紙をかいたり控えをコピーしたり、毎日のようにだれかの屋敷まで会いに行ったり(もちろん徒歩)、アポがいいかげんだから相手の来るのを待ち続けたり。その挙げ句に必死に説得したり、叱られたり恨みをかって切られたり、切腹させられたり。

航海遠略策の長井雅楽なんて、可哀相なもんです。どこといって悪いわけでもないのに会社に変な責任とらされて切腹。責めたてたのは血気にはやる松陰一派ですか。

他にもいましたよね。切り込みかけられたときにいったん逃げて(刀をとりにいった?)、それで士道不覚ってんで結局酷い目にあった学者。もう名前を忘れてしまった。どんなに弁舌知識があっても「無駄死の覚悟」がないとやっぱりダメらしい。えーと、横井小楠ですね。これで評判おとして、せっかくのチャンスを生かせなかったし、明治になってからはわけわからないトラブルで暗殺ですか。

不条理な時代です。自分なんかだったら、まず脱藩する勇気がたぶんない。仮に脱藩してもすぐ食い詰めて、そのうち「優柔不断! 士道不覚悟」とかソーカツされて非難されて切られてしまうんでしょうね。

まったく関係ないですが、桂小五郎、やっはり上手に逃げてたんじゃないかな・・と勝手に思っています。義理や激情で死ぬにはちょっと怜悧すぎる。