すっかり気に入ってしまった莫言の(私にとって)2冊目。
いいですねぇ。清朝末の主任処刑人、出世コースに乗っていたはずの地方県知事、妖艶にして誠実な犬肉料理マダムである若妻。ついでに袁世凱(なぜか本性はスッポンだそうで、笑った)などなど。
舞台は当然のことながら山東省高密県。一種の自然発生民謡ともいうべき(京劇を連想しました)猫腔の哀切な調子に乗って劇は進行します。
ま、要するにこの猫腔の座長が村人を組織して、横暴きわまるドイツ人技師連中をぶっ殺した。で、袁世凱は怒り狂って、西太后の寵愛をもうけた名処刑人に命を下す。清国の名誉にかけて堂々たる処刑でなければいけませんわな。
その刑が「白檀の刑」です。白檀の杭を尻から突き通すんですが、名人がやると数日は死にません。さすが中国。処刑も芸術の域に達しています。
現実と虚構が渾然一体、楽しい上下2巻でした。章の冒頭に歌われる猫腔が雰囲気を盛り上げます。合いの手は「ニャオニャオ」。若妻・眉娘の料理する犬料理もすごく美味しそうです。