★★ 文藝春秋
「独立・土佐黒潮共和国」が副題。その副題通りの内容です。
切り口は面白いんですけどね。書き手も坂東眞砂子だから、それなりには読める。ただしかなりアッサリ味です。なんかの新聞に連載してたみたいですが、連載期間が短かったんでしょうか。
切り捨てられた地方はどうすればいいのか。貧乏県(なんですか?)の高知が住民投票して日本から独立宣言。もちろん日本国は無視して、あいかわらず「県」としてしか対応してくれません。独立したはいいけど高知県にはほとんど産業がない(ないんですか?)。独自通貨の「両」はあっというまに下落して、輸出には有利だけど肝心の品目が少ないし、輸入品がすべてべらぼうに高騰する。
ガソリンなんかは大高騰ですね。車にのるなんて贅沢はできなくなる。みんな自転車です。失業率も上がって、みーんな戦後の日本みたいな状況になります。町の中心部は火の消えたような荒廃。
てな部分はなかなか面白うございました。ただ旧県庁が政府に昇格し、県警が国家警察になり、消防署が消防庁になる・・・というような大変革がどんな具合に進められていったのか、入国管理をどうしたか、電話や郵便は通じるのか、住民は流出しなかったのか等々。しっかり書き込んでくれたら面白かった。ん、それをやると小松左京の「日本沈没」くらいのページが必要かな。
関係ないけど大昔、獅子文六も「四国独立」をサブテーマにした小説書いてましたね。4県合同ならかなり可能性があるかな。ひとつの島が一つの国家になるんだし。
んんん、そういえば「吉里吉里人」もそうか。ただし吉里吉里は完全な寓話というかファンタジーみたいなもんで、独立の実務的な側面はあまり書かれていなかったような気がする。話がスムーズに楽しく進展しすぎるのね。
ま、「やっちゃれ、やっちゃれ! 」、総じて読んで損したという本でもありませんでした。ただし著者の魅力のねっとり濃厚な味はなかったようです。