★★ みすず書房
「イスラム国家から国民国家へ」が副題。小説ではなく、かなり平易な歴史解説本です。平易とはいってもやっぱ歴史ものですから、かなりかったるいです。
スッ飛ばしながら読んでわかったこと。やはりケマル・アタチュルクってのは強い人だったんだなあ。もちろん軍事的に天才なんでしょうが、政治的にも一種の天才。というか、すごい強引な手法を何回も何回もとっている。もちろん政敵に対しては冷酷非情、信念に反する勢力は容赦なくブッ潰します。ブッ潰すというか、文字通り抹殺する。いわばスターリンですね。
面白かったのは、トルコ建国に際して「イスラム」の要素を排除しようとしたため、国家のバックボーンがなくなってしまう危険があった。まだ新しい「愛国トルコ」という新概念だけでは不十分だったんでしょうね。
その代わりに(たぶんやむなく)採用されたのが「国家の父・ケマル」という宗教。これによってなんとか精神的に支えることができた・・らしい。
つくづく大変な国だったんだなあと思います。今でも大変。あいにく広大な版図、雑多な人種と文化を混在させた帝国であり、文化的にも高度なものがあった。だから西欧から虎視眈々と狙われた。19世紀のトルコってのはしんどかったんだな・・という感じです。
もしトルコの位置にあったのが清だったらどうだったな。そんなことも想像してしまいます。やはり次々と蚕食されて、芯の部分しか残らなかったかもしれない。日本だったら、九州、四国、中国、近畿、北海道、東北をなくして、残ったのが関東圏と京都周辺だけとか。
そうそう。予想通り、ケマル・アタチュルクは肝硬変で死んだようです。飲み過ぎ。愛飲したのはラクという蒸留酒で、これはギリシャのウーゾなんかと同じようなものらしいです。