ジャンルの見当がつかない本でした。ワタルは母ひとりと地方で暮らす、ちょっと変わった子供。実はクロマニヨンの息子かもしれない。だから小学生のころからセッセと石器を削り、石斧をつくり槍を作ります。アホな現代人の子供とはつきあわず、孤独に少年の日々を過ごします。
SFなのかなあと思っていたら、実はボーイ・ミーツ・ガールでした。真っ黒けなアンパン(コロッケだったかな、記憶あいまい)みたいな女の子とトモダチになり、小学校ではみんなに薄気味悪がられ、中学では番長の子分の腕を折り、陸上競技部に入る。女の子のためには悪漢退治にも挑戦する。
なんせクロマニヨンなんで、運動能力は抜群なんですが、だからといってすぐトップになれるわけではないのが現実。もっと足の早い奴もいるし、もっと槍を遠投できる奴もいる。ちょっと変わった形ながら、これも青春ストーリーです。
ま、ストーリーがどうこうではなく、なかなか味のある爽やかな小説でした。読後感は悪くないです。
追記
ボーイ・ミーツ・ガールと決めつけるのはちょっと単純ですね。「自分探し」「父親探し」が基線にあるともいえる。でも男の子と女の子の成長のお話として読んだほうが清々しいような気がします。
奥泉 光の「モーダルな事象―桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活」は途中挫折。読み通せなかった。