★★★ 中央公論新社
エリザベス本はいくらでもあるけど、これは「まっとうな本」です。というか、基本的に小説ではなく、史伝とか歴史物語とか、ま、そういうテイストですか。
エリザベス一世ものではトム・マグレガーの小説を比較的最近読んだんですが、こっちは可憐な乙女・エリザベス、悪魔のように冷酷有能なウォルシンガムとかなんとか、ハリウッド映画の原作みたいな代物でした。ひどいけど、ま、それもよし。
で、「エリザベス 華麗なる孤独」はヘンリー八世にも光が当たっています。ひたすら暴君という扱いではなく、彼にとってはそれなりの理屈があって、次から次へと奥さんを殺していった。絶倫ふうの彼ですが、なぜか男子が生まれなかったんですね。それがヘンリーの最大の弱みであり、気がかりであり・・・。
で、エリザベス。即位前もマグレガー本のようにひっそり寂しい生活してたわけでもなく、さすが中世で、何十人、なん百人も侍女やら召使やらを使っている。そりゃそうだ。いちおうは王位継承権をもってる女性なんですから、そんなに粗末に扱われてるわけがないですわな。
即位してからの結婚話のもろもろが面白い。スペインもフランスもオーストリアも、なんとかこの女王と結婚したい。結婚したら、もちろん英国も一緒にもらってしまおうという算段。で、若い女王(最初の頃は若かった)は色目つかったり拒否したり、すねたり、文句言ったり、相手が諦めそうになるとニャンニャンとすりよる。作戦だったのか、たんなる優柔不断だっだのか不明。
結果的に各国の求婚者たちは、手玉にとられてしまった形です。そうやって時間かせぎをしながら、なんとか弱っちい英国は生き延びることができた。なんせスコットランドにはメアリー・スチュアートがいるし、アイルランドはやたら反抗するし、新旧の狂信者たちはケンカするし。貧しい英国としてはけっこう大変なんです。
それはそれとして、女王の寵愛した連中、どれもこれもあんまり出来がよくないですね。現王朝のウインザー系も男選び、女選びの趣味が悪い感じだけど、テューダー朝もみーんな趣味が悪い。
最初のロバード・ダドリーは論外にしても、エセックス伯にしても、どうも役にたたない。これも首切られたけどウォルター・ローリーなんてのはマシなほうかもしれません。たしかローリー、マントを敷いただけでなく新大陸でなんかやったよう記憶があります。何したんだっけ。