★★文藝春秋
上下2巻。算盤篇、論語篇という副題がついてます。
鹿島茂という人、フランスものでは面白いものをたくさん書いてるんですが、こういう伝記・評伝みたいなものも手がけているとは知らなかった。
渋沢栄一というわけのわからない人物を読み解くカギは「サン・シモン主義」なんだそうです。よく知りませんが、ナポレオン3世の時代、フランスではこのサン・シモン主義者が我が世を得ていた。そもそもナポレオン3世がそうだったともいいます。
サン・シモン主義、空想的社会主義ということになってますが、かなり乱暴にいうと、自由に利益を追求させ、その活動や流通を可能な限りスムーズにしてあげれば、きっと素晴らしい社会が生まれる・・・というふうなものらしい。責任はもてませんが、きっとそういうことなんでしょう。そういう社会を実現するためには共和主義でもいいし、専制でもいい。頭に何がのっかっていても関係なし。
で、渋沢栄一はパリ万博の渡欧の際にこの思想というか実践社会に触れて大感動。以後はひたすら「政府の干渉を排除・商人の自由な活動を援助」という姿勢でつらぬいた。そのためには銀行も必要だしガス会社も必要、あれもこれも必要。ニッポン資本主義の神主みたいな人ですわな。
生涯につくった会社や組織が何百だか何千だか。正直、わけのわからんです。でも確かに明治の日本に大方向を与えた人ではあるらしい。
というような輪郭がぼんやりわかっただけでも、この本を通読した甲斐があった。ほとんど飛ばし読みでしたけどね。