★★★ 新潮社
比較的早い時期に書かれた本のようです。ルネッサンス期の4人の法王のお話。
時代後れの十字軍再編を夢見て王や諸公にそっぽを向かれたピオ二世(ピウスII)。サヴォナローラを追い詰めて抹殺したアレッサンドロ六世(アレクサンデルVI)。自ら軍を率いて戦い続けたジュリオ二世(ユリウスII)。そして陽気でお祭り好きで法王庁の予算を使い果たしたレオーネ十世(レオX)。
歴代の法王と対するのはフランス王であり、スペイン王であり、神聖ローマ皇帝であり、あるいは塩野さん大好きのヴェネッツイアであり。
面白かったのはフランス王ですね。常にローマ法王を圧迫し、時々イタリアに攻め込んでくるんですが、フランス文化なのか最後の最後の詰めがいつも甘い。どうも「法王=神聖」という固定観念から逃れられないみたい。それがしたたかなイタリア人連中から見ると不思議でしょうがない。法王だって子供もつくりクソもするただの(あるいはとりわけ欲深な)人間なのに。
フランソワ1世だったかな。法王を追い詰めたはずの和平会談でコロっと懐柔されてしまう。法王が連れてきた(接待役)レオナルド・ダ・ヴィンチに会えて、もう感動々々。たしかダ・ヴィンチはその後で招かれてフランスに行くんですよね。招かれてというより、食い詰めてというのが正しいかも。
何年か前にいったロワール川沿いのアンボワーズ城だったか、広い庭の隅にダ・ヴィンチの小さな礼拝室がありました。寂しい雰囲気でしたね。ガラーンとしていて空虚な雰囲気。
あんまり関係ないですが、ビル・ゲイツがダ・ヴィンチの鏡文字のメモを落札してホクホクしていたことを思い出しました。価値を認める人にとってダ・ヴィンチはもう「神様」なんだろうなあ。でも法王は「たかが職人」としか思っていなかった。たぶん。