★★★ 学研パブリッシング
読んだら煮えくり返るだろうな、ムカムカするだろうなと予想しながら買いました。はい。予想通り、あらためて腹が煮えます。
何を書いたらいいのか。何を書いても虚しくなる。官邸、官僚、県、保安院、東電、それぞれ登場の人物たちの行動は、すべて「だろうな」と理解可能です。みんなそれぞれ守るべきものがあり、完全な嘘はつきたくないが、だからといって責任をとるのは困る。上司に逆らうのは危険だし、面とむかって住民から非難されるのも避けたい。そうやって少しずつ「不作為」をしたり、ちょっと「誤魔化し」や「保身行動」をする。そうした個々の行動の総集が、今までの大きな流れでしょう。
そうそう。一つだけ。
事故後の官邸の対応は、かなり場当たり的でした。パニックを恐れて、細かく嘘をつき続けた。爆発後の枝野官房長官、例によって口は滑らかでしたが、よく見るとフルマラソンしたみたいに汗をだらだら流していた。「あ、嘘をついてる。わりあい正直な人なんだ」と思った記憶があります。
ただその後、反原発の姿勢を明確にしてからでしょうか、いきなり「すべては菅が悪い!」の大合唱になってしまった。そもそもあんまり人徳を感じさせる人ではないし、特に福島の避難場所で住民に糾問されたときのオロオロ対応は、非常に失望。あの場面で開き直るような資質をもっていない人だった。自民党代議士のような図太さがない。良くも悪しくも半分アマチュアふう感覚の政治家なんだなあ。
でもそれとは別に、突然に沸き起こった菅下ろしは不自然でした。「すべて菅が悪い」「民主党が悪い」と決めつければ筋道が非常に単純になって、そりゃ気分はスッキリします。でも、そういう問題なの?
後世に残る菅直人の功績は、東電に乗り込んで撤退を拒否したことだと思います。総理が民間企業に乗り込んで大声あげれば、そりゃ問題多々。あちこちから非難されるのは当然かもしれません。でも「調整的、常識的」に判断して撤退を許していたらどうなっていたか。
そして潮目に逆らう愚行だったのかもしれませんが、浜岡原発の停止。すぐひっくり返される可能性はあるものの、一つの「事実」として残りました。
少なくとも、あの時の首相が菅直人でよかった。ニッポンにとって望外な幸せだったのかもしれない。そう思っています。
それにしても、なぜ朝日新聞出版ではなく学研からの刊行なんでしょうね。「教師や生徒には学研が馴染みがあって・・」とかなんとか、どこかに弁解してありましたが、どうも信じられません。