★★★ 早川書房
これも村上春樹訳。
大昔に読んだことがあった気がしますが、もちろんストーリーは完全に忘却。だいたいチャンドラーはストーリーを追うべき小説じゃないですよね、たぶん。脱線描写と漂う気分を楽しむのが本筋のような気がします。
マーロウはまだ若いのかな。けっこう危険な状況に飛び込んでいって、ボロボロにやられます。殴られたり脅されたり注射打たれたり、散々ですが、もちろん最後はどんでん返しの解決。
ただし細かい部分は「?」が多いですね。主要人物かと思ったら違ったり、脇役かと思ったら実はとんでもなかったり。誰が誰かわからなくなったり。いかにも怪しい雰囲気で出てきた若い娘がなんにも怪しくなかったり。だいだいチャンドラーの描く女性はあんまり魅力がありません。下手。
主な男連中はいい味です。出獄してきた大男。やる気のない警官。ゴリラみたいな臭いインディアン。単細胞の悪徳警官。うまく立ち回っている警察署のボス。珍しく清潔な刑事。
楽しめる一冊でした。前の訳がどうだったか記憶していないので、それに関してはナシ。刑事も探偵も、相手に対しては何故かいつも「キミ」と言うんですね。「おまえ」とか「あんた」などと品のない言い方はしない。