「花のさくら通り」荻原 浩

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hananosakura.jpg★★ 集英社

郊外のさびれた商店街。ほとんどシャッター通りになりかかりで、ちいさな団子屋ビルの二階に移転してきたのは小さな広告制作会社。この会社も都落ちするくらいだから景気は悪くてスタッフもたった4人。

商店街がさびれていくのは大手資本の進出とか、住民の高齢化とか、いろいろ理由はあるけれども、ま、基本的にはみんな守りの姿勢になっていて、覇気がなくなっていて、なるべく将来から目をそむけて、深刻に考えないようにして日々を送っている・・・こともひとつの原因。

で、同じ地域であっても、旧態依然の古い商店街と、新興ショップも少しは進出している新商店街ではまた考え方が少し違う。新旧世代の対立という構図も多少はある。だから商店街組合がもめる。

お寺の跡取り息子は大学を出たので髪を切り、もうすぐ辛い3年の修行に出かけなければならないし、教会の真面目娘は大学に入ったばっかりでルンルンしている。その姉ちゃんはケーキ屋を開いたけど、なかなか利益を出すのが大変。団子屋の息子は新しい菓子を工夫しようとしては、考えの古い親爺に文句を言われている。美容院のやり手マダムはなぜか商店街の男衆に君臨している。

どこにでもあるようなこうした商店街のドタバタ復興物語です。ん? まだ復興までは届かないか。なんとか手がかりをつかめそうになるまでのお話という程度。

それなりに楽しい本でした。それぞれ登場人物たちのキャラクターは、マンガチックだけどしっかり描かれています。荻原浩は安心して読めますね。