★★★朝日出版社
「おっ、新刊か!」と借り出しましたが、もちろん違います。初期の頃の短編を集めたものらしく、副題に「莫言珠玉集」と謳っています。
表題にも使われている「透明な人参」。短編というより、中編に近いでしょうか。若いころのもの、たぶんデビュー作らしく、ストーリーとしては特に何もありませんが、キラキラと感性が光っています。ほとんど最初から最後までキラキラばっかり。黒ん子と呼ばれる自閉的な少年、田舎娘と石工の健康的な若いカップル、嫉妬に狂う片目の鍛冶屋らが織りなす一種のファンタジーです。
こういう文章はじっくり読むといいんだろうなあ・・と思いつつ、実際にはベッドサイドに置きっぱなしで就寝前に少しずつ読みました。頭がボケーっとしている状態で読むようなものではなかったですね。けっこうページをめくるのが大変だった。
小編ですが「お下げ髪」も、けっこう楽しめました。何といって不足のないはずの夫婦の生活が何故かうまくいかない。奥さんが不満をつのらせる。うるさい妻を黙らせようして、つい台所にあった茄子を奥さんの口につっこんでしまう。そしたら・・・ま、笑ってしまいます。
ちみなみにストックホルムでのノーベル賞受賞講演記録も掲載されています。これはよかった。莫言の創作の秘密がほとんどすべて語られています。