「橋本治という立ち止まり方」橋本治

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★★★ 朝日新聞出版

hashimoto-tachidomari.jpgふと見かけて借り出し。なんか月に1回の連載エッセーをまとめたものみたいです。2009年の民主党政権誕生あたりから大震災の後あたりまで。

例によってハシモト流の粘着文体・論理展開ですから、かんたんには読めません。ただ流れは非常に論理的なので、真面目に読めば理解できます。しかも面白い。なるほどなあ。

気がついたこと。
・大震災についてはわりにアッサリ書いています。怒ったり喚いたりはしない。「ハシモトはどんな具合にこれを書くのかな」と気になっていたので、非常に納得。そう書くしかないわな。

・病気入院をしていたらしいです。けっこうややこしい病気。しかもわざわざ6人部屋に入った。しかしナースステーションが近くて眠れない。看護師はやたら元気一杯で女子校体育系そのものだし、同室の患者たちもギャーギャーわめく。しかもジイサンバアサン、偉そうに文句いう患者が多い。「みんな死んでしまえばいいのに」と内心思ってしまう。ははは。確かに。大部屋に入院していると、そういう感覚になります。

・ずーっとニッポンは表にあらわれない「権威」によって運営されてきた。平安の昔からそうです。上皇しかり、明治の重臣しかり。いまはその権威がいない。権威不在で自民党は力を失った。民主党はもちろんです。

これを出版の衰退と絡めて推論してきるのがすごい。なるほど。よくある「これは売れなかったけど良書だ」というパターンの論評はどこから生まれるのか。だれが勝手に「これは良書だ」と認定しているのか。つまりはぼんやりした「権威」ですわな。

昔から疑問に思ってきました。たとえば大会社の社長人事、あるいは省庁の事務次官人事。戦前だったら元帥位。その組織でいちばん偉いポストのはずなのに、だれがそれを決めるんでしょう。下の連中が合議で推すのか、それとも引退した老人たちが密室で推薦するのか。


読み通すとかなり暗い気分になります。でも昔からニッポンはそうだった。非常に暗いけど、でも歩き続けるしかない。「展望がないからイヤだよー」なんてガキみたいに甘いこと言ってちゃいけません。

そうそう。島崎藤村「夜明け前」を褒めていました。意外や意外の拾い物だったらしい。かったるい「落ち目の旧家のドロドロ話」と思っていましたが、違うってんですね。
つい気になって図書館で見てみましたが(さすがに買う勇気はない)、字が大きかったり分冊の文庫だったり、あんがい適当なのがないです。図書館データベースで検索かけてみたら筑摩の現代日本文学大系で1冊になっている模様。気力がでたら借り出し請求してみようかとも思います。
はい。とりかかるにはかなりの元気が必要です。