学生時代、「国文学概論」という人気講座がありました。たぶんその頃は助教授だったI氏の語りが軽妙で、ひたすら笑いながら聞いていました。もう少し真面目に出席しとけばよかったなあ。
で、島崎藤村の話になって、藤村が一念発起、家に閉じこもって「破戒」を書いた。貧乏に輪をかけた極貧です。でも自分は仕事をしなきゃいけないからご馳走を喰った。女房子供には梅干しを見せて、匂いだけかがせて飯を喰わせた。明治の男ってのはそうだったんです。
ま、鴎外みたいな例外もいましたけどね。鴎外は飯にあんこを乗せてくっていた。漬け物だろうが刺身だろうが、ぜーんぶ熱湯で殺菌してたそうです。ドイツ留学、コッホの細菌学に傾倒した人ですから。だから陸海軍カッケ論争では頑固になった。それはともかく。
で何年かかったか知りませんが、ついに大部の「破戒」が完成。感慨ひとしおの藤村の前に細君が奥の襖を開けてふらふらと出てくる。「あなた、目が見えません・・」
栄養失調でトリ目になっててしまったんですね。この部分の語り、怖かったです。で゛細君はどうか知りませんが、娘を3人殺してしまったのは事実らしい。
藤村、初期の甘ったるい詩や歌は好きでしたが、小説は読んだことなし。破戒は面倒っぽいし、夜明け前もなんか悲惨だというし、敬遠。
考えてみると、読んだことのない大家って多いです。えーと・・・・。
尾崎紅葉は少し読んだ。二葉亭四迷も少し。泉鏡花もちょいと。幸田露伴はザッと。森鴎外は一応。樋口一葉は少し。夏目漱石は晩年のもの以外を網羅。国木田独歩はナシ。田山花袋はあかんかった。
徳田秋声はダメ。永井荷風もダメ。島崎藤村は全滅。谷崎潤一郎もほんの少し(でも細雪はがんばって読んだ)。志賀直哉はあかん。武者小路実篤は嫌いだ。里見弴は知らん。佐藤春夫も知らん。
芥川龍之介はぜんぶ読んだ。山本有三はほんの少し。横光利一は好かん。川端康成は一応。プロレタリア系はすべて放棄。
最近のものでも偏りが多いです。 一部の作家のものはかなり読んでるけど、ちょっと面倒なものはハナっから読もうともしない。
資金があれば文学全集でも全巻揃えて、ちょぼちょぼ読む。うーん。かなり理想的に映るけど、無理ですね。二段組、三段組の細かい活字をいまさら読み通せるはずがない。体力、視力がなくなってしまった。資力も視力もない。
そういえば「老後はディック・フランシスの競馬シリーズを読むか」という遠大な計画もあったなあ。面白いのはわかってるけど、当時は読むのが惜しかった。もちろんまったく実現できていません。
そういえば先日買ったコニー・ウィリスの「オールクリア1」、まだ手つかずの積ん読状態です。いちばん美味しいお菓子を最後に残してあるようなものかな。それどころか、6月に出る「オールクリア2」の予約をしてしまいました。