「四十一炮」 莫言

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★★ 中央公論新社

41pou.jpg日時の制約もあって以前に一度挫折した本です。読み直し。

「四十一炮」とは、41の砲撃でもあり、41の大ボラでもあるとか。いまは僧侶志望となった肉フェチのクソガキがひたすらホラというか誇大妄想というか、事実と虚構の境目のあいまいな41の告白を繰り返します。

この告白されるストーリーの筋とは別に、クソガキの周囲ではこれもまた事実か幻影かさだかではない食欲と肉欲のお芝居が展開され、正直、事実なんてどうでもいいわ。ストーリーは無意味ですね。

ちなみに41発の砲撃は、旧日本軍の捨て去った迫撃砲を使ったものです。迫撃砲とは、おそろしく仰角の高い小型砲ですね。子供の頃のニュース映画で見た朝鮮動乱の人民解放軍はこれをポンポン楽しそうに撃っていました。いまは「朝鮮戦争」というのかな。時代とともに名称が変化するんで自信ありませんが。

舞台となる村は、村をあげて「水注入肉」で繁栄しています。誰ももう農作なんて儲からないことはしない。ひたすら牛 馬 犬 ロバ ダチョウ ラクダなどなど屠殺精肉で商売している。ただし注入も水だけでは腐りやすいので賢い奴はホルマリンも入れるし、色素もたっぷり使って誤魔化す。

肉だけじゃありません。村の廃品回収の貧乏オバはんまで破れダンボールに水をぶっかけては重量を水増し(言葉の通り)して稼いでる。ほんま、何もかも水増し。小説のどこかに「水を注入できないのは水だけ」というセリフもありました。ま、そういう村です。ただしこれが本の主題の一部なのかどうか、そのへんは判然としません。

とかなんとか。★★か★★★か迷うところですが、莫言にしてはあんまり楽しめなかったかな・・・という本でした。