「検証 福島原発事故 官邸の100時間」木村英昭

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★★★ 岩波書店

内容は「プロメテウスの罠」をほぼなぞっています。著者は朝日新聞記者で「プロメテウスの罠」取材執筆陣の一人だから当然ですか。それにしても「プロメテウスの罠」は学研からの出版だったし、本書は岩波です。朝日も逃げてるなあ。違う事情があるのかもしれませんか、どうしたってそう映る。

ただプロメテウスではさしてページを割けなかった官邸内部の動きと背景を、思い切ってページを使って詳説したのが本書。最初の100時間、つまり4日間だけに絞ったので、かなり読みごたえがあります。またこの本では「主張」や「判断」がほとんどありません。もちろん執筆者は言いたいことが山ほどあるはずですが、精一杯抑えているのがわかる。ひたすら取材によって得た「事実」だけを客観的に書きのべています。

取材対象は可能な限り実名。実名を書けなかったケースでは、なぜ匿名としたのか理由をそのたびに記述しています。かなり煩雑かつ膨大ですが、精度と信頼性を高めるためには必要なことだったんでしょうね。

内容そのものは、だいたい想定内でした。こんなときに「想定内」なんて言葉を使うのは悲しいですが、でも想像どおり。やはりそうだっだのか。ただし「事実」としての各人の発言記録はかなりあからさまで、飾りがない。臨場感。新聞記事なんかでは絶対に出てこない肉声の実感があります。そういう点では興味深く読めました。

そうそう。海水注入問題で当時の安倍元総理が菅直人を批判したらしいとは知っていましたが、実際の批判コメントを読んだのは今回が初めて。なるほど、こんなことを言ったのか。なんとも露骨ですね。あざとい。品がない。これに例の大手新聞が尻馬に乗って騒いだ。

今年の夏の菅直人のブログでは、「菅総理の海水注入指示はでっち上げ」のメールマガジンの件で安倍総理を訴えるとかなんとか書いてありましたが、その後はどうなったんだろ。その後の経緯を新聞でも読んだ記憶がありません。

言葉は適切じゃないですが、「面白い」本でした。気分は超悪いですが、どんどん読める。面白がってちゃ、いけないなあ。


蛇足ですが、登場人物の中ではやはり使い走り、下っぱ政治家の言行がいいですね。たとえば寺田(総理大臣補佐官)とか。重鎮クラスになると、やっぱり言葉を選ぶのか、あんまり人間味がない。少なくとも取材者に対しては口が重くなるんでしょう。

本質とは関係ないものの玄葉光一郎が目を泣きはらしていたとか。当時は特命担当大臣だったと思いますが、大臣ではなく福島選出議員としての感情が露出してしまった感じ。それも当然だろうなと思います。非難する気にはなれません。