★★★ イースト・プレス
もう8年前になるんですか、吾妻ひでおの「失踪日記」がベストセラーになりました。その続編というか、ちょっと違う視点での書き下ろしです。分厚いです。
子供が帰宅した際にこれを持参してきて、ザザッと読みふけってから置いていきました。置いてあったのを夕食前にこっちもザザザッと読破。
内容はタイトルのまま、アル中病棟での3カ月を詳細に描いたものです。登場人物も「失踪日記」の常連が出てくるし、それとは別の患者もいる。登場の看護師や医師も増えました。
作風というか、ほんの少し雰囲気が変化していますね。うーん、キャラクタが少し人間っぽくなった。縮尺を計ってはいませんが、2等身の幼児だったのが3等身になったとでもいうか。ところどころの俯瞰の1ページ絵がしみじみしています。叙情というか感慨というか、退院してからの生き方の大変さ、過酷さを感じさせる。ギャグも減っています。生身の吾妻ひでおの苛立ちや感情も随所に描かれます。
商売と考えたらこんなに厚くて書込の多いマンガは無理でしょうね。あくまで本人が書きたいから書いた。損得ヌキ。8年かかったと言っています。
絵の中に出てくる建物や景色、実はけっこう知っている場所が多いです。患者が散歩する野川沿いの道も知っているし、座り込んでしゃべっている水車小屋もわかる。そうか、こんな所を歩いてたんだ。
そうそう。この本の表紙、なんかヘンテコリンなピンクです。趣味が悪い。なんでだろ?と思ってから気がつきました。不安定なんです。安心できる基礎のない浮遊の色。きっと作者の底の抜けたような妄想心象なんだろうな・・と思ったら納得できました。