「日本史はこんなに面白い」半藤一利 編著

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nihonshiwakonna.jpg★★★ 文藝春秋

半藤じいさんが各分野の碩学たち(ばっかりでもないけど)と対談。例によって講談調です。

とりあげた内容は聖徳太子から始まって最後は丸谷才一との阿部定事件だったかな。真面目な話もあるけど、ほとんどは酒の席での無駄話みたいなもんです。だから面白いともいえる。

へぇーという事実(たぶん)もいろいろあって、たとえば満州事変の石原莞爾がキリッとしたいい男だったとか。ただし後年になって取材しようとすると取り巻き連中のガードがえらく堅くて、それへの挨拶が大変だったとか。神様に祭り上げられてたんでしょうか。

天皇=軍人説なんかもけっこう面白かったです。そりゃ子供の頃から厳しく軍人として教育され続けたらずっーと「善良な学者」でばっかりはいられない。また何よりも(国民よりも)皇統を強く意識していたんじゃないかという説にも納得。母親(貞明皇太后)との微妙な関係についても初耳。

玉音放送に関しては、雑音まじりはともかく、話している内容や言葉は非常にわかりやすかった。難しい単語は使ってるけど要するに常套句・定型文です。あれを「難解でわからなかった」説が流布しているのはかなり変。発音が聞き取りにくかったとしても、アナウンサーが直後に非常にクリアに読んでいるし。確かに。

何事によらずエピソードってのは、耳に馴染みやすい説がいつのまにか定説になる傾向はありますね。みーんな確かめたりせず孫引き、孫々引きで書くから圧倒的に増えて、ゆるぎない常識になってしまう。あとになって「あれは違う」という人のほうが少数派になる。関係ないけど戦時中の英語教育なんかもそうですね。ストライクを「よし!」と言っていたという説のほうが面白い。

阿部定事件は新聞マスコミにやけに大きく取り上げられた。なんか想像以上の大事件だったみたいです。時代の閉塞感がきつくて、それで逆に破天荒の大騒ぎになったんじゃないかとか。一いわばガス抜き。

読みやすい内容ですが、けっこう考えさせられる部分も多い一冊でした。