★★ 朝日新聞社
分厚い一冊です。小泉総理の北朝鮮訪問から筆を起こし、ウラン濃縮計画やら核危機などなど、六カ国協議の進展やぶりや進展しなさぶりを克明に描いたものです。「描いた」というより、とにかく要人たちの膨大なコメント取材集ですね。
もちろん取材といっても対象になっているのは主に日中韓の外交官たちです。こうした連中とかなり親しいんでしょうね。よくまあという細かい部分を調べ上げている。
血湧き肉踊るドラマチックなストーリーを期待しちゃいけません。とにかく外交官や政府要人たちがどうたらこうたら、内部抗争したり足を引っ張ったり、会議では席の並び順でもめたり、声明文の一言一句に神経を尖らせたり、妥協したり。現実の「外交」って、たぶんこうしたことの連続なんでしょうね、きっと。
なるほどねぇ・・・という点では面白い本でした。ただしひたすら細部事実の羅列なので、読み通すとぐったり疲れます。
細かなエピソードですが、平壌訪問を決定するまで、小泉純一郎は徹底的に秘密ガードした。政府内でも外務官僚でも、事情を知っていたのはほんの一握り。米国に対してさえ、ギリギリまで知らせなかった。直前の調整で、だれか大物政治家を北朝鮮に派遣しましょうと提案された際にも拒否したそうです。「政治家を行かせると必ず妥協をはかろうとする(それが政治家の天性)。おまけに秘密を保てず必ず事前に誰かに話す。こんな仕事に政治家を使っちゃいかん」
そうそう。なんか当時から拉致問題の当事者だったみたいに自慢しているアベくんですが、実は訪朝発表の前日になってようやく知らせてもらった。さすがにアベに黙ってるわけにもいかないしなあ、前日ならなんとか顔も立つだろ・・という感じ。当時は官房副長官だったみたいですが。
つい笑ってしまいました。