★★ 講談社
帚木蓬生って、何か読んだことがあるかどうか。ないような気もする。
で、「日御子」。例の邪馬台国のヒミコです。ただいきなりヒミコが主人公になるのではなくて、はるか前から話がつながる。北九州の小さな国で代々通訳(使譯)をつとめる一族がストーリーテラーで、まずは奴国。丸木舟のような小舟の使節団に随行、漢へ渡って光武帝から金印をもらいます。
その孫(だったかな)の代になると舟のサイズも少し大きくなって三国時代の魏へ。帰路は魏の使節団も同行で、これが後の魏志倭人伝になる。そのまた孫(たぶん)もまた使節団とともに大陸へ・・・というようなお話。親から子へ、祖母から孫への語り伝えです。
その間に北九州もだんだん統合され、ヒミコの治世で邪馬台国が力をつけます。しかしヒミコが没するとその南の国が力を蓄え、彼らの目は海を渡った東へ向いて、いつかは西日本一帯の統合も示唆されます。
スケールも大きいし「使譯の一族」という舞台回しもなかなかいいんですが、基本的に登場人物がみんな誠実で善意の人ばっかり。その甘さがちょっとものたりません。雰囲気は違うものの、ローズマリー・サトクリフの歴史ものに近いような気もします。要するにジュブナイルの雰囲気。